『最底辺の10億人』――アフリカが貧困から抜け出せない4つの理由:藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー
中国・インドなどかつての発展途上国が世界経済をリードする時代、アフリカは貧困から抜け出せない。『最底辺の10億人』ではアフリカを取り巻く4つの罠を指摘する。
中国・インドなどかつての発展途上国が世界経済をリードする時代。その一方、最貧国を抜け出せない国々がある。アフリカである。そこに住む10億人がなぜ貧困に追いやられているかを分析し、その対策をまとめた1冊。著者は世界銀行出身のアフリカ経済の世界的権威だ。
アフリカを取り巻く4つの罠(わな)
著者は4つの罠(わな)を指摘する。
- 紛争の罠。内戦による損失は600億ドルを超すという。ソマリアやコンゴ共和国など、内戦とクーデターの繰り返しにより、平和時の経済成長を消してしまっている。一時的に停戦しても、武器は残るから治安は劣化したままだ。
- 天然資源の罠。ナイジェリアやセネガルなど、豊かな資源によって安易に利益を得られることで、むしろ経済は停滞するという。コーヒーブーム時のケニアでは国家予算を何倍も振る舞うが、その後の暴落時に支出を減らせなかった。
- 内陸国の罠。中央アフリカ・ウガンダなど、資源のない内陸国は隣国にチャンスがない限り、停滞を余儀なくされる。アフリカの人口の30%は内陸国に住んでいる。
- ガバナンス(統治)の罠。ジンバブエ、マラウィなどは国の政策が最低レベルにあったため、低所得を脱することができなかった。
援助をいかに行うべきか
4つの罠からアフリカを離すためには、賢く援助する必要があるという。闇雲な援助は武器となって紛争を悪化させることもある。技術支援を行い、産業が生まれるためのリスクマネーを供給し、経済成長につなげる。そのことで、4つの罠を和らげることができる。
技術力を持ち、武器を輸出することのない日本が、アフリカに果たせる役割は、きっと大きいはずだ。
著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)
RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1200冊超。
関連記事
- 連載バックナンバー
- 経営コンサルタントの仕事とは――藤沢烈さん(前編)
「これからの日本に必要なのは、革新的な経営感覚を持った若き経営者だ」――そう考え、有望な人材の発掘・育成のサポートに日々邁進する経営コンサルタントがいる。藤沢烈、33歳。マッキンゼー出身、現在は独立してベンチャー企業のコンサルティングを行う、彼の日常とは? - 1人シリコンバレー創業プロジェクト、そして――藤沢烈さん(後編)
「エゴは罪悪ではない」「200年先を見据えて考える」――思案しながら藤沢さんが選びだす言葉は非常にユニークだ。その彼が企画したのは“起業経験がない若い人に、1億円出資します”という一大プロジェクト。彼の思いは、そこに至るまでの人生とは……?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.