“ざっくりBS(賃貸対照表)”で企業の財務状況を図解する:手書きでマスター【図解思考編】
株主総会の時期になると、いろんな上場企業の決算公告が新聞に載りますが、細かい数字がたくさん並んでいるため、見る前からゲンナリする人が多いはず。でもシンプルな図解にすると、その企業あるいは業界の本質的な問題や特徴がかんたんに見出せるのです。
株主総会の時期になると、いろんな上場企業の決算公告が新聞に載るるようになります。多くの場合は、BS(Balance Sheet:貸借対照表)、PL(Profit and Loss statement:損益計算書)、そしてCF(Cash Flow statement:キャッシュフロー計算書)の3つです。この3つは、企業の儲け具合、決算時の資産価値など財務面の健全性を図る代表的な資料で、財務三表と呼ばれています。
重要なのは分かっているとはいえ、みなさん、このBSやPLを入念にチェックしているでしょうか? 多くの人はあまりにも細かい数字がたくさん並んでいるだけで、見る前からゲンナリするはず。チェックするとしても、せいぜい売上がいくらくらい、利益はしっかり出ているか、程度だと思います。それもしかたのないことです。
しかし、BSやPLをシンプルな図解にすると、その企業あるいは業界の本質的な問題や特徴がかんたんに見出せるのです。本当です。そのポイントは2つです。
- 数字は暗算できるくらいの大雑把な数字に丸める
- BS、PLはざっくりした棒グラフの比率で示す
まず、決算数字は正確さが求められますので、端数まできちんと記載されています。しかし、これがノイズとなって、頭に入ってこないことが多いのです。ですから、数字は本当に大雑把でよいのです。
例えば、A社は流動資産が256億5251万円、固定資産が197億8025万円、そのほかの資産が49億5223万円という財務データがあったとすれば、各々250億、200億、50億くらいのざっくりさで構いません(流動資産とは1年以内に現金化できる資産、流動負債は1年以内に返済すべき負債のことです。そうでないものは「固定」となります)。
次に、これを比率に変換します。全体の合計資産が510億ですから、これで割ります。すると、流動資産が50%、固定資産が40%、そのほかの資産が10%となります。ここまでくると、かなりシンプルに理解できますね。この企業は、流動資産と固定資産のバランスがとれ、比較的よさそうに思えます。
同じ手順で、BSの右側、つまり、流動負債、固定負債、資本を割合で示すと、30%、20%、50%でした。BSの右側と左側の情報がそろいましたので、これを図にしてみましょう。
さて、このようにざっくり数字を丸めて比率に応じて図にすると、企業の財務状況を比較するのも、たいへん簡単になります。この企業は、流動負債に対して、流動資産が多く、なおかつ借金が少なく、資本が潤沢なので、財務的にはかなり健全な企業のようです。
この手順で、異なる企業を比較すると、とても分かりやすいです。下図の2つの企業を見てください。どっちの企業が財務的に健全かお分かりですよね。
B社では、流動負債が流動資産よりも多く、短期的に支払わないとならないお金が、入ってくるお金よりも大きくなる可能性が高いことがわかります。固定資産が多く、設備産業であることが伺えますが、固定資産を売却して流動資産にするか、さらに借入を増やし、流動資産を一時的に増やすほかありません。いずれにせよ、結構、台所事情は悪いことがわかります。
細かい数字にとらわれると、全体像がぼやけてしまいます。数字をまるめ、手描きで図解にすると、問題点が明確になります。ぜひ、みなさんも気になる会社の決算公告を「ざっくりBS」にしてみてください。
著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
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