知らないことについて会議で意見を求められたらどうする?:マグロ船会議術(2/2 ページ)
意見が出ない、話題がそれる――あなたの会社では、会議が時間の無駄になっていないでしょうか? そこで注目されるのがファシリテーションスキル。会議をスムーズにし、かつ必ず結果を出す進行の仕方を『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』の著者、齊藤正明氏が教えます。
漁師たちの他愛のない雑談も、職場での会議も、話し合いの場を盛り上げる極意は同じです。こんなところに、漁師たちのファシリテーション能力の高さを見ることができます。
「わたしはアケミちゃんを知らないので、分かりません」と、正直に答える――50点
かしこまった職場の会議ならばなおさら、このような答え方をしてしまう人は多いのではないでしょうか? 確かに本当のことですし、自分の正確な情報を、相手に伝えることができるという面においては模範的な回答かもしれません。
わたしも当時、「アケミちゃんのことは知らないので、何とも言えません」と回答をしてしまいました。すると、あとで船長から次のような注意を受けました。
「答えとしてはおうてても、それじゃ場がシラけるじゃねーか。場に元気がなくなると、誰も仕事をする気にならねーんど」と教えてくたのです。
自分の発言は、「合っているか/合っていないか」という観点だけでなく、「自分の発言が、みんなを元気にするか/シラけさせるか」という観点でも考える必要があります。
何も思いつかなかったので、適当に何か言ってみる――90点
あまり解決にはならない意見でもとりあえず言ってみることは重要です。
漁師たちの会議でも、「ガリガリ君、1年分プレゼントとかはどげーか?」という、とってもくだらない発言もあり、「おまえは、ホントにくだらないことを言うのー」と、笑いが起きました。
結果、くだらない発言は「くだらない意見でも許される雰囲気」を作ります。
会議において、最初からいい意見が出ることはまれです。最初に、くだらない意見がたくさん出るからこそ、それを参考にして誰かがいい意見を思いつくのです。
ですから適当でもいいので、何かを発言し、どんな意見でも許される雰囲気をつくることが必要なのです。それがいい意見を生み出し、結果を残す会議の場の作り方です。
意見の取っ掛かりに、前に出た案の欠点を指摘していい対策を引き出そうとする――20点
「前に出た案の欠点を指摘して、いい対策を引き出そうとする」場合、往々にして「さっきの案は、××なところに欠点があるから、もっと、○○すればいいんですよ」というように、上から目線の態度になりがちです。
そうなってしまうと、いくら理屈で合っていても「イヤな奴オーラ」を会議の場にふりまいてしまい、あなたの意見がどんなに良くても通りにくくなる恐れがあります。
さらにこうした態度は、会議の場にイライラした空気をつくって発言しにくい雰囲気にしてしまいますので、ほかの人からいい意見が出ることもなくなります。
前に出た案は、わざわざ否定する必要はありません。あくまでも自分の案だけ「わたしはこうすればいいかなと思うんですけどね」という言い方で伝えましょう。
正しい意見よりも盛り上げること
会議に参加する姿勢で大事なのは、「いかに自分が正しい意見を言うか」よりも「いかにこの会議が盛り上がるように応援できるか」です。
なぜなら、「正しいことを言おう」と思ってしまうと、自分の意見以外は間違っていると感じてしまい、会議は「意見の潰し合いの場」になりかねません。そうなると、意見がひとつも出ないまま会議が終わってしまいます。ですから、正しいことを言うよりも、みんなが発言しやすい雰囲気を作ることのほうが大事なのです。
逆にもし、あなたが会議やミーティングを運営する立場にいるなら、くだらない意見が出たときに、「君、もっとまともなことは言えないのかな?」などと返してはいけません。そうしたことを言ってしまうと、参加者は、「自分も何か発言したら冷たくされるかも……」と恐れてしまい、手を挙げる人はいなくなります。ですから、いい対応例としては、「あはは。それはおもしろい案だね! さて、この調子でほかにも意見はあるかな?」と言って、発言しやすい空気を作りましょう。
「ここにいるみんなの力をあわせて、いい意思決定をしよう!」。そんな心構えが会議では大切なことを、わたしはマグロ船で教わりました。ぜひ、あなたの職場でも試してみてください。きっと会議を通じて、参加者同士の連帯感も感じられると思います。
筆者紹介:齊藤正明(さいとう・まさあき)
ネクストスタンダード代表。1976年東京生まれ。北里大学水産学部卒。大学卒業後、民間企業の研究所に入社し、「マグロの保存剤」の開発に携わる。
入社2年目のとき、上司から「マグロの保存剤の開発を成功させるには、お前は一回マグロ船に乗ってこい」と理不尽な命令をされるも、断りきれずマグロ船に乗せられる。
嫌々乗ったマグロ船であったが、人間関係がギスギスしやすい閉ざされた空間だからこそ、素晴らしいコミュニケーション術がたくさんあり、笑顔で働く漁師たちに感銘を受ける。
マグロ船を降りたあと、漁船での体験を元にファシリテーション術を自社に導入し成功。その後独立し今に至る。代表著書に『活きのいい案がとれる!とれる!マグロ船式会議ドリル』(こう書房)、『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』(マイコミ新書)がある。雑誌などの掲載多数。
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