何で自分の提案は通らないの? と思ったときにできる1つのこと:明日の私を強くするビジネス元気ワード(2/2 ページ)
ほぼ同じ内容の提案を、私がすると通らないのに先輩がするとすぐに通る。そこにはある1つの理由があった。
提案内容は別に悪くなかった……はず
上司 ところで今回、あなたの提案が通らなかった理由はなんだったと思う?
私 営業1部より2部の方が人気あるとか、そういうことですか?
上司 自分にとって良くないことが起こったときに、すぐに自分以外に原因を探すクセはやめなさい。それではこの後の対策を考えられない。
私 ……。では、私の提案内容が悪かったのでしょうか?
上司 提案内容は別に悪くなかったよ。柿山さんの提案と大差なかったでしょ?
私 じゃ、なんでですか?
ちょっとキレ気味な私。上司は「柿山さんとの違いを考えて。この機会に、自分のことをきちんと客観視してみることだ」と言い、仕事に戻るように指示を出した。
仕事に戻っても考え込んでしまい、私はあまり集中できないでいた。そんな私を見た同じ部署で唯一の同期が「何かあったの?」とランチに誘ってきた。私は上司から言われたことを説明し、今回の一連の出来事についてどう思っているかを聞いた。
同期 うーん、正直、提案する時期が早かったように思う。
私 早かった?
同期 うん、「その提案、あなたが言えることではないでしょ」って感じがした。
私 何で私が言ってはいけないの?
同期 うーん……。正直ね、「他にすべきことあるんじゃないの?」って思ったよ。
同期は少し申し訳なさそうな表情を浮かべてから、あらためて真っすぐ私の目を見て言った。
同期 この前ある人から「信頼蓄積理論」っていうのを、聞いてさ。たぶん今回のことって、この理論が関わってると思う。「信頼蓄積理論」って、「自分の意見や提案をする前は、受け入れてもらう『土壌』作りが必要」という考え方のことでね。当たり前のことを当たり前に行うことで、周囲からの「信頼」を貯金できる。貯金が増えると、意見や提案ができる「土壌」ができる。この「土壌」ができてはじめて、周囲への影響力を発揮できる、ということなんだって。
でね、あなたはまだこの「土壌」ができてないのに、影響力を発揮しようとした。だから早いって感じたんだ。
私 つまり当たり前のことができていないってこと……?
あまりの言われように私は、目の前が真っ暗になった。では、今までの2年間はなんだったのか。
同期 いや、私は同期だから、今まで2年間、あなたが前の部署でがんばったのは分かってるよ。だけど他の人は、うちの部署に異動してきてからのあなたしか知らないじゃない。うちの部署での「土壌」ができないうちは、やはり意見や提案を通すのは難しいと思うんだよ。
私 当たり前を積み重ねて「土壌」を作る――。じゃあ、当たり前って何なの?
同期 簡単に言うと「約束を守る」ことじゃないかなあ。「納期」や「品質」というくくりは分かりやすいんだけど、もっと大きく言えば「期待された仕事の役割を果たす」のが「約束を守る」ことだと思うんだよね。3年次には3年次、10年次には10年次にそれぞれ期待された役割があって、いろんなことを会社や周囲と「やります」って約束してるの。
私 約束を守る……。例えば?
同期 私達には「お客様対応窓口の3年次社員」としての役割があるよね。例えば「全ての顧客対応を単独で適切に行うこと」「後輩に対応のコツを教えられること」「後輩の手本となる言動をとること」とか。うわー、細かく言えばいくらでも出てきそうだね。
この部署に移ってきてからの自分の立ち居振る舞いを考えてみると、まさに赤面ものだった。おそらく表情も暗く、嫌々出社しているのが周囲に伝わっていたはずだ。顧客対応もいまだに1人では自信をもってこなせるとはいえない。「土壌」どころか、当たり前ができていない自分を恥じた。せめて学びとろうとする姿勢や素直に頑張る意欲を見せていれば、まだ違っていたはずなのに。
何を積み重ねれば信頼の貯金が増え「土壌」ができるだろう。自分の仕事の役割をちゃんと考えて、その内容を上司に報告することから始めようと思った。この上司への報告も、当たり前の1つのはずなのだ。
今日の元気ワード:信頼蓄積理論を確実に抑えよう
「信頼蓄積理論」とは、EPホランダーという社会心理学者が提唱している理論です。当たり前のことを積み重ねることで、「信頼」が「貯金」できる。満期になったら周囲が自分の意見を聞いてもらえるよ、ということです。当然貯金なので、使うとなくなってしまいます。約束を守らなかったりうそをついたりしても、貯金は減っていきます。
信頼は、貯金し続けないといけないわけですね。
※この記事は、誠ブログの明日の私を強くするビジネス元気ワード:自分の提案を通すための、ただ1つの条件とは?より転載、編集しています。
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