preminiに見る、ドコモの端末戦略(2/2 ページ)

» 2005年01月25日 02時19分 公開
[斎藤健二,ITmedia]
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 実際、premini発売以降、ドコモのイメージが少しずつ変わりつつあると中野氏は話す。

 「auは新しい。ドコモは保守的……。近頃こんなイメージを持たれていたが、(コンセプトモデル投入によって)ドコモに対する見方が変わってきている。販売数量だけではなく、イメージ向上につながっている」

ドコモがpremini以来発表してきたコンセプトモデル。一部機種は未発売

 「INFOBAR」から始まったデザインモデルで、一気にイメージを向上させたKDDI(2003年10月6日の記事参照)。対するドコモは、デザインを意識したもののメインテーマとするには至っていない。「200万人、300万人に使ってもらえる携帯のデザインは、単に奇抜なデザインではなく、微妙なバランスが重要」という900i発表時のiモード企画部長夏野剛氏の言葉が、端的にそれを表している(2003年12月22日の記事参照)。シリーズモデルでは“マスを狙うことが最重要課題”だということだ。

 マスを狙わずに、デザインなり付加価値などにフォーカスできること。それがコンセプトモデルの意義だともいえる。

 その意味では、premini-IIのコンセプトは若干曖昧とも取れる。必要最小限に機能を絞って小型化を果たしたpreminiに対し、QVGA液晶やメガピクセルカメラの搭載など機能アップを行い、ターゲットを少々マスにシフトさせたからだ(1月24日の記事参照)。コンセプトモデルはニッチだからこそ光り輝くのであって、マスに近づいてしまうと“シリーズモデル”とバッティングする。実際、「premini-IIではなくSO506iの名称でもよいのではないか」という議論もドコモ内部であったようだ。

枯れたPDCの価値

 2004年末から、一挙6機種のコンセプトモデルを投入したドコモ。その背景には、新機能を開発して搭載する役割がFOMAに移る中で、ムーバ(PDC)が技術的に“枯れてきた”ことがある。

 端末の新規開発には多大なコストがかかるのが常識。しかし開発にかかる労力の多くは、ソフト開発とテストに費やされている。premini-IIは、他のコンセプトモデルとは異なり506iCのハードとソフトをベースにしているが、今やコストは2xxとほとんど変わらないという。

 FOMAを中心とした“シリーズモデル”は新機能が搭載される代わりに開発コストが高くつく。開発にも時間がかかり、発売が延びることもしばしばだ。対して、すでに成熟したムーバをベースとした“コンセプトモデル”は、開発が確実かつ短期間で済む。「premini-II」も本格的に開発がスタートしたのは2004年7月だという。

 実際のところ、パケット通信コストや最新機能を除けば、FOMAよりもムーバが優れているところは数多い。完成した技術を使い、カバーエリアでも電池のもちでも、未だ軍配はムーバに上がる。

 このムーバという資産をどう生かすか。単に端末を安く作れる技術──ということではなく、“コンセプト”を形にするためのベース技術として使う。それがpreminiを代表とする“コンセプトモデル”のミッションでもある。

 携帯に求めるものが多様化する中で、新機能や高速通信は誰もが求めるものではなくなってきている。マス向け一本槍では、ニーズを満たせないことが明らかになりつつある今、ムーバの価値を再認識させられる“コンセプトモデル”を投入できるか。ドコモのコンセプトモデルの挑戦はここにあるのではないだろうか。

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