総務省は2月3日、「携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会」の第8回会合を開催した。今回が最終回で、これまでに出された意見の要旨がまとめられた。この要旨を総務省に報告し、同省が最終的な結論を下す。
同日、新聞各紙が「総務省がソフトバンクに800MHz帯を割り当てない方針を固めた」と報道したが、総務省側はこれを「憶測にすぎない」と否定。今後は、検討会で行われた議論が正式に報告され、検討を経て、昨年募集されたパブリックコメントと共に割当方針が「できるだけ早期に」(総務省)示される予定だ。
検討会で配布された「意見の要旨(案)」は、通信事業者も参加して行われた各回の議事を手短かにまとめたものとなった。周波数割当とそれに伴う料金の低廉化について、あるいは周波数の需要拡大とひっ迫の見通しについてなど、各項目に沿って出された意見が一通り羅列されている。
興味深いのは、検討会としてどう考えるかという結論を一切打ち出していないこと。「ドコモから、これこれという意見があった」「ソフトバンクから、これこれとの指摘があった」と羅列するばかりで、例えばどちらの意見が支持されたかなどは何ら記載されていない。
各構成員は会合で、この点を特に問題視しなかった。「この意見は、本来こういう主旨だったので修正してほしい」といった個別の指摘は出たが、全体としての要旨案に批判的な意見は出なかった。
唯一、この問題に踏み込んだ発言をしたのが日本経済新聞社の関口和一構成員。関口氏は会合の終盤で、「意見を言い尽くして終わっているが、検討会としてこう、というまとめをする必要はないのか。そこを確認させてほしい」と発言した。
検討会の座長を務める中央大学の土居範久氏の答えは、「皆の意見が集約され、一方向を向いているようならそれは書く。しかし、違うなら(両論)併記するということにしている」。読み手からすれば明確な“結論”が出ているのが望ましいだろうが、「多様な意見もあったし、陳述人(=各通信事業者)の意見を総くくりにできない」ため、この書式をとったという。
関口氏は重ねて、「意見がポイントとして書いてはあるが、それがマジョリティの意見だったのか、マイノリティだったのか、それが分からないが」と質問した。
これには、総務省側が回答した。「これは(出席者の)共通意見だと思うが、今回の検討会の報告は情報通信行政に迅速に活かさないといけない」。“迅速に”というフレーズに力をこめ、ある程度結論の出ない状態でも報告として提出せざるを得ないとの見方を示した。
座長の土居氏は、「それはねぇ関口さん、今となっては難しい話ですよ……」と語りかける。
「座長として(意見を集約するように)振られても、、あと数回検討会をやらないといけないことになる」。その声の低いトーンに、一堂は苦笑するしかなかった。
「国民の意見はどちらか?」〜孫社長 |
会合終了後は、ソフトバンクの孫正義社長が総務省の職員に公平な対応を求める一幕もあった。 総務省側が、ソフトバンクの面会申し入れには応じないにもかかわらず「ドコモやKDDIの経営陣には会っている」という噂を聞いたとして、そうした事実はあるのか、感情的になって会ってくれないのではないかと問いただす内容。総務省側は「そんなことはない」と簡単に答え、「次の用事があるので」とその場を去った。 その後、周波数会合で“恒例”となった囲み取材に応じた孫氏は「(会合で)意見をいろいろ出すのは自然なこと。しかし問題は、多くの国民がどちらの考えを望んでいるのかだ」と話す。 「パブリックコメントの募集は9月に行われ(2004年9月4日の記事参照)、3万通もの意見が集まったとも言われている。この結果がいまだに発表されない理由は何か。総務省側が事前に考えていた割当方針案と、異なる意見が多かったからではないか……と私は思う」と、同省への不信感をにじませた。 |
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング