帯域オークションはアリか?〜携帯周波数会合第6回(1/2 ページ)

» 2005年01月12日 01時50分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 総務省は1月11日、「携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会」の第6回会合を開催した。今回は通信事業者は出席せず、各構成員の間で意見交換が行われた。

 帯域問題の当事者同士ほどの激しい議論はなかったが、それでも携帯の未来のあるべき姿をめぐって、「帯域オークション」などをテーマに真剣なやり取りが交わされた。

Photo 当日の検討会の様子

 800MHz帯や1.7GHz帯をめぐる議論は、容易には収拾がつかないほど深刻な意見対立を招いている。この現状を、「今のままだと『どうしたらいいの』という感じ」と率直に表現するのは、法政大学の黒川和美構成員。

 黒川氏は経済学者としての立場から、まずは「市場がコンペティティブ(競争状態)なのか、オリゴポリー(寡占状態)なのかを考えると話す。同氏はまた、「エコノミストは、供給側(=ここでは通信キャリア)のことはあんまり考えない」とコメント。事業者の負担増は無視して、競争状態を保つことが、自由経済市場にとって一番よいことだとの見方を示す。

 この観点でいうと、黒川氏は現状にやや不満がある様子。

 「既存事業者は(契約者を獲得したことで)、信じられないほどの利益が確定している。競争を強くしないといけないと、ものすごく思う」

 とはいえ、どれほどの競争状態になればいいのか、また総務省などの努力でどれだけの無線帯域を用意できるのか。さらに、各キャリアがどれくらいの帯域を持てば十分なのか――を考え出すと、「素直に言って分からない」と同氏は認める。

 技術革新が進む昨今、携帯と無線LANの融合により、携帯パケットのトラフィックを分散処理できる可能性もある。それらを考慮に入れると、各キャリアに割り当てるべき帯域幅を、客観的に分析することは難しい。

 「マーケットの想定ができない。“新技術”といいだすと、もっと制約条件が多くなる。これでは、議論ができない」

 同氏は、現状がコンテスタブル(参入・退出が自由な市場)でないことは確かだとしながら、かといって既存事業者から帯域を取り上げると、投資インセンティブを損なうことになるとも言及。そう考えていくと、エコノミストとして“これなら公平”と説明責任を果たせる解決策は、「帯域オークションぐらいしかない」と苦笑した。

帯域オークションは“アリ”か?

 このコメントの後に続けて発言したのは、日本経済新聞社の関口和一構成員。関口氏は、携帯の既存キャリアに2GHz帯を“タダで与えてしまった”とコメントし、「これはまずいんではないか。公正な値付けがいる」と説く。

 同氏は黒川氏の言及した帯域オークションが、それなりに合理的だとの主張を展開する。「オークションは日本ではなじまないという声があるが、米国でもダメと言われていた」(が、実際に米国でオークションは始まった)とコメント。

 「資本力のあるところが帯域を独占することにつながる、という批判があるが、周波数のロットを刻む(細切れにしてオークションにかける)などして弊害は除ける」とした。

 だが、帯域オークションといえば事業者に膨大な出費を強いる方法。「海外では失敗した」と見る向きも多い。

 総務省も、2004年10月に発表した「電波利用料制度の見直しについての基本的な考え方」の中で、次のように述べてオークションを否定している。

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