8月9日、NTTドコモが「FOMAらくらくホンII」および、シルバー層向けiモードメニュー「らくらくiメニュー」を発表した(参照記事1/2/3)。
詳しくは詳細記事に譲るが、今回の発表で筆者が特に感心したのが、ドコモが「シルバー層向け端末を出しただけ」にとどまらず、iモード利用促進のために専用のメニューまで用意したことだろう(8月9日の記事参照)。シルバー層向けの端末としてはツーカーセルラーの「ツーカーS」が有名だが、単純に機能を削ぎ落とすのではなく、「ITリテラシーを高めていこう」というドコモの姿勢は高く評価できる。
実際のところ、シルバー層のITリテラシーは“食わず嫌い”さえ何とかすれば、向上させることができる。確かにPCを使いこなすというのはトレーニングに時間がかかるかもしれないが、携帯電話のメールやコンテンツ程度ならば、シルバー層でも多くの人が使えるようになるだろう。この時に必要なのは、「わかりやすいユーザーインタフェース(UI)」と「相談に乗ってくれる人がいる」こと、そして「明確なニーズがある」という3点だ。
この中で特に重要なのが「明確なニーズ」である。筆者は以前、携帯電話を所有する50〜70代のグループインタビューをしたことがあるのだが、その中で「メールまで使いこなす」ユーザーのすべてが、“孫や家族の写真が見たいから”というニーズを持っていた。離れて暮らす子ども夫婦から、日常的に孫や家族の写真をメールしてもらううちに、自分からもメールが送れるまでに操作を覚えたのだという。「(韓流ブームで)ヨン様が見たいから」とDVDプレーヤーを購入し、操作を覚える中高年女性が増えたように、リテラシーの向上には明確なニーズの存在が欠かせないのだ。
しかし、これまでの携帯電話産業において、その“当たり前のこと”が「シルバー層のライフスタイル」にまで踏み込んで行われていたかというと疑問が残る。UIの工夫や、シルバー層向けの機能開発は進んだが(2004年9月3日の記事参照)、ライフスタイルを理解してニーズを汲みあげるサービス/コンテンツ開発体制の整備は、現役世代向けよりも遅れているのではないか。
筆者はシルバー層向けのITサービス/コンテンツ潜在市場は、現役世代と同じかそれ以上にあると考えている。医療・介護分野といったシルバー層にとって重要な分野はもちろんだが、もっと身近な生活や楽しみの領域でもモバイルITが活躍できる場所は多い。シルバー層向けの「リアル連携/生活インフラ化」のソリューションも多々あるだろう。
シルバー層のライフスタイルに踏み込み、ニーズに向き合ったサービス/コンテンツ開発を行うことが、シルバー層のITリテラシーを向上させ、利用を促進する“良薬”になるはずだ。
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