クアルコムジャパンの山田純社長は、1月18日に開かれた4G&IEEE802 WORLDカンファレンスで、現在標準化作業が進められている、移動体向けの次世代高速通信技術、IEEE802.20についての概要と同社の戦略を明らかにした。
IEEE802.20は、現在移動体「WiMAX」として知られる「IEEE802.16e」と並んで標準化が進められている移動体向けの新通信技術だ。時速250キロ程度の高速移動中でも下りで数Mbpsという高速通信が可能な点が最大の特徴で、将来的にはVoIP技術などを導入することにより、3G携帯電話に代わり得る技術の1つと目されている。
2002年9月に、IEEE802委員会において要求条件やプロジェクト運用のための議論を開始し、2003年3月に正式にワーキンググループとして発足、802.20という名称が決まった。そして2004年7月に、System Requirement Document(SRD)を策定して最終的な目標仕様を決め、標準化のプロセスと評価方法についての議論を開始した。しかし、当初の参加者の多くは、「IEEE802.16」を移動体通信にも対応できるように拡張した802.16eへと移動してしまった。「その理由は定かではない」と山田氏は話したが、目標仕様の決定までに時間を要したことや、要求される目標がかなりハイレベルなものだったことも原因として考えられるという。
その後、802.20に残った企業を中心に議論を進め、2005年9月のシステム提案公募では、米QualcommがFDD方式のQFDDと、TDD方式のQTDDを、京セラがiBurstを拡張したTDD方式のBEST-WINEをシステム全体の提案として提出。このほか要素技術としてKDDIがOFDM技術を、ETRIがFDD-OFDMA技術を、ArrayCommがマルチアンテナ技術をそれぞれ提案した。その結果、11月の会合で米Qualcommと京セラの提案を軸に提案統合を模索することが決まり、2006年1月の会合でベースライン仕様となるFDDとTDDの各方式を選定する見込みとなっている。
IEEE802.20に提案された案件
802.20において要求されている条件は、具体的には6つある。
米Qualcommの提案しているQTDDおよびQFDDは、いずれも広域での移動体通信環境において、周波数利用効率が高く、高速移動時の性能に最適化しており、これらの条件を満たしているという。
具体的には、1セクタの1Hzあたり、QTDDの場合で、時速3キロで移動中の下りリンク速度が2.11bps、上りリンク速度が1.27bps、時速120キロでの移動中でも下りで1.85bps、上り1.15bpsという高い周波数利用効率を実現。QFDDでも時速3キロなら下りが2.20bps、上りが1.38bps、時速120キロで下り1.96bps、上り1.18bpsでの通信が可能だという。動作モードは5MHz、10MHz、20MHz幅の3つが用意され、物理層にはOFDMAとMIMO技術を採用している。VoIPで必要となる呼制御(シグナリング)には、EV-DO Rev.Aベースのプロトコルを用いることで、移動環境でのQoSを提供し、完全なハンドオーバーもサポートする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング