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韓国携帯事情:

視線は2010年以降へ──「4G」に向けて動き始める韓国企業

韓国では早くも次世代の通信技術「4G」への動きが活発化している。韓Samsung Electronicsが100Mbpsで通信しながらのハンドオーバー実験に成功。WiBroの国外展開なども現実味を帯びてきた。
2006年09月12日 23時15分 更新

 韓国では、最近3Gの次の世代である「4G」という言葉をよく耳にする。“3.5G”といわれるHSDPAサービスですら始まって間もない現状で、4Gが具体的にどういったサービスになるのかをエンドユーザーがイメージするのは難しい。しかし、どこよりも早く4G時代をリードしようと、企業レベルでは既に熾烈な競争が始まっている。

Samsung Electronicsが4Gの技術を実演

 8月31日から9月1日までの3日間、韓国の南にある済州島で「Samsung 4G Forum 2006」が開催された。ここで韓Samsung Electronicsは、車などに乗って比較的高速に移動していても最大100Mbps、静止状態では最大1Gbpsというスピードで、途切れることなくデータ通信ができるハンドオーバー技術の実演に成功した。静止時に複数のユーザーが同時接続しても、最大1Gbpsの帯域を活用して、32チャンネルのHD画質の動画を一度にダウンロードしながら、インターネットやテレビ電話、遠方のカメラから送られてくるリアルタイム映像の視聴などが可能だった。

 また同フォーラムでは、8×8 MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術を用いて、最大データ転送速度を3.5Gbpsにまで高める試験の結果も発表された。これは8つの送受信アンテナで電波をやり取りすることで、3.5Gbpsの転送速度を実現するというものだ。

 Samsungは、2005年に開催した「Samsung 4G Forum 2005」でWiBroのデモを行い、これに成功した。そのWiBroはすでに商用サービスが開始されており、今年はこれをさらに上回る高速な通信規格のデモに成功したことになる。今回のSamsungの実験結果には、まだ乗り越えるべき課題があるとはいえ、4Gを予想より早く体感できるようになるかもしれないと思わせるものだった。

Photo ハンドオーバーデモの際に利用されたバス
Photo Samsung 4G Forumにて。左から2番目が、Samsung電子社長のイ・キテ氏

米国ではモバイルWiMAXサービスの開始へ向けて始動

 米国でも、第3位の携帯電話キャリアSprint Nextelが、モバイルWiMAX(WiBro)を採用したサービスを提供すべく本格的に動きだした。8月8日に同社は、モバイルWiMAXの商用サービスを開始するためSamsung、米Motorola、米Intelとの提携を発表した。

 Sprint NextelがモバイルWiMAXを採用した理由はほかでもない、4Gをにらんだワイヤレスブロードバンドネットワークを構築するためだ。同社は次世代ワイヤレスネットワーク用周波数である2.5GHz帯の85%を保有しており、2007年には10億ドル(約1170億円)、2008年には15〜20億ドル(約1755〜2340億円)もの積極投資を予定する。

 大手のSprint Nextelが導入を決め、モバイルWiMAXが米国の広い地域で利用可能になると見込まれることから、韓国ではモバイルWiMAXの普及に大きな期待が集まっている。モバイルWiMAXは、韓国ですでに商用サービスを開始しているWiBroと同じ技術で、WiBroを世界に広める活動にも弾みがつきそうだ。これまでにも他国へWiBroをアピールし続けてきたSamsungにとっては、同社の技術力を発揮できる大きな成果といえる。

SK Telecomは中国の次世代通信規格開発に参加

 また8月末には、韓SK Telecom(以下、SKT)が中国政府の国家発展改革委員会と、中国が独自に推進している3G技術、TD-SCDMAを商用化するためのMOU(覚書)を締結した。この提携により、SKTは韓国や中国でTD-SCDMA技術やサービスの開発にあたる。まずはソウル近郊の盆唐市にTD-SCDMAの試験局を設置し、ここで開発を行う。

 また同社によると、3Gの後継技術である4Gの開発も、中国政府と共同で行っていくことで同意しているという。SKTでは、こうした長期の技術提供を通じて、SKTの関連メーカーが中国市場へ進出しやすくなるとしている。

 同社は今年6月に、中国の携帯キャリアであるChina Unicomと提携し、中国市場へ本格的に進出した。China Unicomとはサービスやプラットフォームの共同開発、情報提供などさまざまな分野で協力することで、お互いの力を強化したい考えだ。

 今回、SKTが中国国家発展改革委員会と提携したことで、中国におけるSKTの地位はより確固たるものとなる。3G、そして4Gへと動き始めた世界最大級の携帯電話市場、中国におけるビジネスをより有利に進められることだろう。

Photo TD-SCDMAを商用化するためのMOU(覚書)締結の調印式にて。今回のMOUは、SK Telecomが中国市場で事業を行う際の大きな弾みとなりそうだ

思ったより早く来る? 4G時代

 国際電気通信連合(ITU)では、4Gは「停止時に最大1Gbps、移動時では最大100Mbpsの高速通信を提供する次世代無線技術」だと定義している。ただ、具体的に利用する周波数帯や細かな技術仕様などはこれから詰めていく段階で、周波数に関しては2007年の「世界無線通信会議(WRC-07)」において決定し、2010年頃に商用サービスが開始される見通しだ。

 これが予定通り実現すれば、移動中でも高速なデータ通信が可能になり、現在の一段階上を行くネットワークサービスが実現するのは間違いない。例えば韓国では、「融合」というキーワードの下、携帯電話の端末で通話やデータ通信を行うだけでなく、テレビの視聴や動画/音楽の鑑賞、決済、公共サービスなど、多様なサービスの実現を目指している。

 これらの4Gに対する構想は、まだイメージばかりが先行しており、具体的なものではない。しかし、今回Samsungが行ったデモは、4Gが研究室レベルの技術ではなく、実際にデモンストレーションが行えるレベルまで開発が進んでいることを示したという意味で、大きな意義がある。

 2007年に周波数が決定すれば、そこからは今よりもっと速いペースで技術開発が進む可能性もある。Samsung社長のイ・キテ氏が「4Gサービス(の開始時期)は早まっている」と話すように、競争の激化によって、4Gは思いのほか早く体験できるようになるかもしれない。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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