中国政府と大唐電信などが中心となって推進してきた中国独自開発の3G方式「TD-SCDMA」(2月20日の記事参照)は、これまでは技術的な議論が中心で商用化の見通しは不透明だった。しかし今回のPT Comm 2005(10月21日の記事参照)では複数社が実際に稼動する端末を展示しており、商用化のメドが近いことを感じさせた。
TD-SCDMA開発の中心企業といえる大唐電信のブースでは、実際に稼動可能な2つのTD-SCDMA端末が展示されていた。やや大柄な「DTM8001」は通信事業者などへのテスト用端末。フィールドテストでの利用が想定され、一般向けに市場で販売されるものではないとのこと。
一方手のひらサイズのストレート端末「DTM8002」はコンシューマ向け製品として開発されたもの。会場内では実際にTD-SCDMAの試験電波を拾っていた。同社マーケティング部の陳健怡氏によると「市場に出せるレベルの小型端末はようやく完成したところで、今月から展示会で公開している。ただしまだ背面カメラが起動しないなど不具合があるため、さらに開発を進めていく」とのこと。DTM8002はTD-SCDMAシングルバンド対応で、GSMとのデュアルモード端末は「年末に向けて開発中」(同氏)という。DTM8002は同社のTD-SCMA小型チップセットのデモという要素も強く、基盤などの展示も行われていた。
韓Samsungブースには早くもTD-SCDMA端末が2機種展示されていた。「SGH-T550」はTD-SCDMAとGSM900/1800MHzに対応した“世界初の商用向けTD-SCDMA端末”とのこと。筐体などは同社のW-CDMA端末「SGH-Z105」をベースとしており、サイズは89×48×25ミリ、120グラム。TD-SCDMA化で最大384kbpsのデータ通信速度が可能。また「SGH-T560」はヒンジ側面に130万画素カメラを備えた“世界初のTV電話対応TD-SCDMA端末”。これもTD-SCDMAとGSM800/900MHzのデュアルモードに対応する。
韓LGブースでは、TD-SCDMA/W-CDMA/GSMの3モードに世界で初めて対応した「T8150M」を参考出品していた。3方式に対応したことで海外のW-CDMA圏でも高速データ通信が可能になる。同社は海外のW-CDMAサービス開始当初から端末を投入することで、大きな市場シェアを勝ち取ってきた。TD-SCDMA市場でも早くから参入することで、W-CDMA同様の成功を収めたいところだろう。
TD-SCDMAアライアンスのブースは加入約20社の展示が一カ所で見られるとあり、海外からの来場者もひっきりなしに訪れていた。目立っていたのはTD-SCDMA端末の展示で、各社とも複数の機種を展示、モックアップから稼動するモデルまで多数の端末が展示されていた。
TD-SCDMAの商用開始時期は、中国政府がまだ明確な態度を示しておらずサービスや端末発売時期がいつになるかはっきりしない。この現状でSamsungとLGは商用化可能とうたった端末を展示しており、両社のTD-SCDMA市場にかける意気込みが伝わってくる。参入をアナウンスする海外メーカーも増えてきており、TD-SCDMA市場もこれから動きが活発化しそうだ。
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