今、スーパーマーケットが大転換期を迎えたGMS凋落、地方再編(2/3 ページ)

» 2015年08月04日 08時00分 公開
[伏見学ITmedia]

中心市街地からロードサイドへ

 このような市場全体の低迷と歩調を合わせるかのように、この20年でスーパー業界では大きな地殻変動が起きている。

 みずほ銀行の調査によると、1990年には営業収益上位の大半が大都市を地盤とするスーパーで占められていたのが、2012年には都市を基盤とするスーパーは淘汰の進んだGMSが大幅に数を減らし、残りは地方有力スーパーが占めるように様変わりした。スーパーマーケット業界に詳しい同社 産業調査部 流通・食品チームの中井彰人調査役は「モータリゼーションによってロードサイド(幹線道路沿いなど)の大型スーパーの顧客が増え、中心市街地の店舗が急速に衰退したため」とその背景を説明する。

上場スーパー営業収益額/経常利益率。1990年と2012年で比較(出典:みずほ銀行 産業調査部) 上場スーパー営業収益額/経常利益率。1990年と2012年で比較(出典:みずほ銀行 産業調査部)

 1990年代以降、乗用車を保有する世帯が増えたことで、ロードサイドのGMSで買い物をする顧客が急増。これに伴い、今まで徒歩や自転車などで訪れていた地方中心市街地のスーパーが衰退する一方、ロードサイドに大型店を展開した地方食品スーパーが地域でのシェアを広げ、地域を超えて事業成長していった。さらには2000年に大規模小売店舗立地法が施行され、出店規制が原則自由になったことで、地方ロードサイドへの出店競争が激化したことも優勝劣敗を加速させた。

 しかしながら今、揺り戻しが起きつつある。商圏広域化を前提としたスーパーの出店戦略は転換を迫られているのだ。顧客の高齢化に伴うモビリティの低下と、郊外から進む人口減少によって、「スーパーの店舗戦略は都市部回帰、小商圏化対応の方向に進んでいく」(中井氏)のである。

活発化する地方再編

 こうした流れにおいて苦しいのが地方スーパーである。そこでまさに地方を中心としたスーパーマーケットの業界再編が加速しており、ここへきて経営統合や業務提携といった動きが活発化している。

みずほ銀行の中井彰人調査役 みずほ銀行の中井彰人調査役

 例えば、中国地方を中心に大型商業施設「ゆめタウン」を運営するイズミは6月30日、広島県に本社を構える食品スーパー・ユアーズを子会社化する方針を発表した。同社は2014年7月に広栄(熊本市)、今年2月にはスーパー大栄(北九州市)を買収するなど、事業拡大に積極的だ。

 大手も地方参入に攻勢をかけている。今年3月にセブン&アイは大阪地盤の食品スーパー、万代と業務提携を発表。万代は146店舗(2015年5月時点)を展開し、2015年2月期の売上高は2963億円に上る。今回の提携によってセブン&アイは物流や商品開発で協力関係を構築するなどして、関西圏の事業強化に乗り出していく。

 今後勝ち残るスーパーの条件として、中井氏は「必ずしも企業規模が大きければいいというわけではないが、新たな投資や価格競争などをできる余力が最低限必要。投資も継続的にできなければならない」と述べる。その選択肢として地方ス―パー同士、あるいは地方スーパーと大手スーパーとの経営統合や資本提携が進んでいるのが現状だとする。

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