なぜ日本ラグビー界は、五郎丸の海外移籍を“歓迎”するのか赤坂8丁目発 スポーツ246(1/4 ページ)

» 2015年11月12日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]

臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:

 国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。

 野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。


 日本ラグビー界で久々にスポットライトを浴びるスター選手が現れた。ご存じの通り、ラグビー日本代表のFB・五郎丸歩選手(ヤマハ発動機)だ。

 ラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会で南アフリカから金星を挙げるなど1次リーグ(プールステージ)敗退ながらも史上初の3勝(1敗)をマークした日本代表チームでキッカーを務め、プールステージで全体2位の合計58得点を叩き出す大活躍。一躍時の人となって海外からも熱い視線が送られるようになり、帰国後は世界最高峰リーグ「スーパーラグビー(SR)」のレッズ(豪州)からオファーが舞い込んで入団が決まった。

 キックの前に見せるルーティーンで助走前に両手を拝むように見せる“五郎丸ポーズ”は、それほどラグビーに興味がなかった人たちにも知れ渡るようになった。これまでなかなか注目を集めることができなかった日本ラグビー界にとって、スター選手・五郎丸の誕生はこの上ないプラス材料だ。

 しかし半面で、そのスター選手が海外移籍を果たすとなれば「ジャパンラグビートップリーグ(JRTL)の空洞化につながり、ひいては日本ラグビー界にとって打撃につながるのでは」と見る人もいるかもしれない。だが、その心配は全くの無用。なぜならば五郎丸はヤマハ発動機に所属したまま海を渡るからだ。どういうことか。ヤマハで11月13日から開幕するJRTLの公式戦を終えた後、2016年2月26日に行われるレッズのSR開幕戦に向けて豪州へ出発する予定。つまり完全移籍という形ではなく、ヤマハとレッズを掛け持ちしながらプレーすることになるのである。

 JRTLの全日程終了はチームが4位以内まで勝ち進んだ場合でも来年の1月24日。SRは基本的に毎年2月から7月(来年は2月下旬から8月上旬)までの21週間に渡って開催されるリーグで、ちょうどJRTLのオフシーズンに当たる。だから両立が可能なのだ。

世界最高峰リーグ「スーパーラグビー」(SR)のレッズ(オーストラリア)でプレーすることが決まった五郎丸選手(出典:レッズ公式Webサイト
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