なぜ日本ラグビー界は、五郎丸の海外移籍を“歓迎”するのか赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)

» 2015年11月12日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]

「ラグビー日本代表の強さ」が知れ渡るかも

 日本代表に準ずるメンバー編成でSRに初参戦しようとしているサンウルブズにとって、人気と実力を兼ね備えたスター選手・五郎丸の不在は普通に考えて手痛いはず。それでも、日本ラグビー協会の関係者たちは今回の五郎丸の海外挑戦を長期的ビジョンで見ればサンウルブルズ、ひいては日本ラグビー界全体にとっても将来的な有益に必ずつながると前向きに解釈しているようだ。

 日本ラグビー協会は今回のW杯を日本におけるラグビー人気向上の「千載一遇」のチャンスととらえている。日本のプロ野球、サッカーのJリーグに「追いつき追い越せ」とばかりに2003年からスタートしたJRTLはこれまで爆発的人気どころか、一般的な認知度すらなかなか得られていないのが現状だった。

 「日本代表チームが強くならなければ、国際的認知度もあがらず国際交流(代表の対外試合)も促進されない。だから国内におけるラグビーの人気も上がらない。観客も増えない。そしてラグビーワールドカップ日本招致を成功させることも厳しい」とかつて辛らつな発言を残していたのは、2019年の次回W杯日本大会招致に尽力した元日本ラグビー協会前副会長・真下昇氏だ。

 その“身内からのゲキ”にこたえるようにして、4年後の大事なW杯日本大会を前にイングランドの地で長らく待ち望まれていたスター選手がタイミングよく誕生。日本代表も決勝トーナメント進出は逃したものの飛躍的な成績を残した。真下氏の言葉になぞらえて考えると、今大会で確かな成長を遂げた日本代表が今後、世界のトップレベルにある国々と国際強化試合を組むことは以前よりも容易になっていくだろう。そうなっていけば日本代表のレベルアップも計れる。

 加えて、その日本代表の中心選手である五郎丸がSRに海外チーム所属選手として出場し、活躍を繰り返せば「ラグビー日本代表の強さ」は世界に知れ渡ることにつながる。SR海外挑戦のパイオニアである田中、その後に続いたツイ、リーチにも当然同じことが言える。

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