日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
「杭打ち不正」がすさまじい勢いで広がってきている。
横浜のマンションが傾いたことで露呈した、旭化成建材の杭打ち工事のデータ流用について同社が社内調査をしたところ、本件とは別に少なくとも50人以上の担当者が関わる266件のデータ流用があったことが判明した。
問題の40代担当者が不正について「先輩から教えてもらった」と証言をしていることからも、この不正テクニックが同社の中で「秘伝」として脈々と受け継がれていたことは明らかなので、この結果はある意味では想定内みたいなところはあったのだが、驚いたのは、杭打ち業界大手「ジャパンパイル」まで18件の杭打ちで不正流用があったと白状したことだ。
報道によると、すべて担当者は異なるということなので、最低でも18人が不正に関与しているということだろう。となると、こちらも旭化成建材のように社内で、データ流用のノウハウが担当者間で引き継ぎかれていた可能性が高い。もはや1社、2社の問題ではなく、「杭打ち業界では当たり前の慣習」ではないのかという疑念が浮かぶ。
ただ、これにしたって「氷山の一角」にすぎない。
冷静に考えてみると、捏造癖のある人間ばかりが杭打ち担当になるなどありえない。今回はたまたま横浜のマンションが沈んだので、「杭打ち」にフォーカスがあたった調査がなされているだけに過ぎず、他の施工箇所をつつけば、同様の不正が浮かび上がる可能性も否めないのだ。
実際に、国交省は来年度から「多重下請け」の実態調査に乗り出すと公表。「過剰な多重構造は経費の増加や安全・品質の低下を招く」と今回の不正続発との因果関係を示唆している。
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