なぜ、JRグループは若者たちにチャレンジし続けるか。それは、「なぜ青春18きっぷが存続しているか」という問いでもある。これはレジャー産業としてみれば当たり前のことだ。旅行は運輸業の需要の1つ。一方でレジャー産業そのものでもある。若者たちはマーケットの裾野であり、裾野を広げると富裕層マーケットを開拓できるからだ。
前々回の本連載で、「レジャー産業の属性は可処分所得と可処分時間で決まる」と書いた。消費者の属性は可処分所得と可処分時間のかけ算で決まる。そこには4つの属性がある。
可処分所得が少なくても、可処分時間が多ければ、低単価で長時間遊べるレジャーを選ぶ。鉄道の旅なら青春18きっぷユーザーである。反対に、可処分所得が多くても、可処分時間が少ない場合は、高単価で短時間に満足できる旅を選ぶ。グリーン車やグランクラスに乗り、高級旅館に1泊か2泊という旅だ。日本のレジャー産業、特に鉄道業界はこの2つの属性が主だった。
可処分所得も可処分時間も少ない消費者はレジャー産業の市場ではない。遊ぶ余裕などないからだ。この属性の人たちの生活にも心身の安定は必要だけど、これはビジネスではなく、公的資金で公園を整備すべき、となる。
そして第4の属性。可処分所得も可処分時間も潤沢な「富裕層属性」である。鉄道業界だけではなく、レジャー産業が苦手としている分野だ。なにしろ、サービスの提供側がサラリーマンばかりで、お客さまの気持ちを理解できていない。しかしながら、豪華観光列車を成功させるために取り組む必要がある。鉄道業界にとって未開拓の分野だ。
ちなみに、富裕層の定義は2つあるようだ。クレディ・スイス証券は金融資産と不動産資産の合計が1億円以上と定義する。日本の富裕層人口は2015年で約212万人、全人口の2%だ。2020年には359万人になると見通している(関連リンク)。野村総合研究所も1億円以上という基準だけど、不動産を除く純金融資産に注目し、2014年の日本の富裕層は101万世帯だという(関連リンク)。
富裕層は私に縁のない世界だけれども、意外と多い数である。総務省統計局によると、大学生・短期大学生の入学者数は約62万人だ(関連リンク)。富裕層の約212万人、約101万世帯は、大学受験産業よりもはるかに大きな市場と言えそうだ。
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