日本を引っ張るのは俺たちだ!:日本経済再成長のカギは地方にあり
連載
» 2016年03月03日 08時00分 公開

新連載・「よなよなエール」流 ガチンコ経営:地ビールブームから一転、8年連続赤字で“地獄”を見たヤッホーブルーイング (4/5)

[井手直行,ITmedia]

インターネット通販に賭ける

 時は少し経って2004年。相変わらず売り上げが減少し、赤字は創業以来8年も続いていました。いよいよ打ち手がなくなってきたとき、最後に1つ、やり尽くしていない仕事が残っていました。それはインターネット通販です。

 当時、楽天市場にビールを販売する直営店を出店していたのですが、この担当者もだいぶ前に辞め、それっきり開店休業状態で売り上げはほとんどありませんでした。当時私はインターネットで買い物をしたことがなく、PC自体もほとんど触ったことがない素人でした。しかし、よなよなエールを販売してくれるスーパーなどの取引先がなくなっていき、全国に点在するビールファンに直接このビールを届けるしか会社の生きる道はありませんでした。「これでダメなら本当にもう打つ手がない!」――。会社をたたむ前の最後の賭けだという必死の思いでネット通販を一人でやり始める決意を固めました。

 当然、素人がいきなり始めると叫んだところで何をやって良いか分かるはずもありませんでした。そこで藁(わら)にもすがる思いで楽天市場が主催する新規出店者向けの講座に参加しました。会社は赤字なのに受講料数十万円を捻出したのは、本当にもうこれが最後の挑戦だと覚悟していたからです。週に数日、長野県にある醸造所から新幹線で当時六本木ヒルズにあった楽天本社に通いました。

 「トップページの作り方」「メルマガの書き方」「キャッチコピーの作り方」など、素人からすると目からウロコの販売スキルを脳ミソから溢れるほどに学び、毎日家に帰ると深夜まで復習がてらWebサイト制作にそのノウハウを取り入れる作業を繰り返しました。

 すると面白いことに、徐々に日本中に点在していたビールファンの方たちが通販サイトを通じてよなよなエールに注目し、注文をしてくれるようになりました。そしてありがたいことに、「このビール美味しい」「以前、長野で買ったことがあったけど販売店がなくなり探していたんです」「これを飲んでビールの価値観が変わりました。応援してますよ!」といった喜びや励ましの声がメールなどで数多く寄せられて来るようになりました。

ネット通販によって看板商品のよなよなエールに再び光が当たる ネット通販によって看板商品のよなよなエールに再び光が当たる

 ビールが売れていく、お客さんが喜んでくれる、しかも応援までしてくれる。その声が直接私たちの元に届くというのは何と素晴らしいことなのだろうか。酒屋さんで門前払いにされ、販売先がなくなり売り上げが急降下したどん底時代から比べると、本当に感動的で、大げさかもしれませんがビールメーカーとしてこの世に存在する意義というのを初めて実感できた瞬間でした。

 「ファンから支持されることは最も大事なこと。そして、そのありがたいファンを絶対に失望させてはいけない。二度とこんなありがたいファンを手放してはいけない。」これがファンに対する私の思いの原点です。こう思えたときから、インターネット通販を武器に急成長をしていくことになるのですが、もちろん当時はそういうことになろうとは想像もできませんでした。

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