ホワイトカラーも一流にする「トヨタの自工程完結」ノッている会社は、ここまでやっている!(3/7 ページ)

» 2016年03月04日 08時00分 公開
[上阪徹ITmedia]

2007年「自工程完結」が全社方針に

 実は自工程完結は、最初は現場の間で広まり、大きな成果を生み出した。品質管理の検査で、どうしても出てきてしまう不具合が、この取り組みで一気になくなったのだ。象徴的な事例がひとつある。工場内の「水漏れ品質保証」だ。工場内でみんなが最も困っていた、最も難しい課題だった。

 できあがったクルマに激しく水をかけ、水漏れがないか見ていく試験では、ごくまれに水漏れが見つかるのだが、どこに問題があったのか、把握するのに大変な労力が必要だった。すべての工程をチェックしないといけない。そこで、この水漏れが一切起きないようにする方法を考えた。それは、水漏れにかかわる2000以上の作業をすべて洗い出し、書き出し、水漏れしないよう精査していくことだった。

 これこそ「心がけ」ではなく、科学的に捉えるということ。自工程完結である。そんなことができるはずがない、という声もあった。ところが、実際に水漏れゼロが達成できてしまう。しかも、水漏れ以外にもプラス効果をもたらす。

 以来、「心がけ」ではなく、「すべての工程を洗い出し、見直して精査し、何をすればいいのか、という行動まで落とし込む」プロジェクトがあちこちで生まれていった。この通りにやれば、必ず結果が出る。安心して仕事ができる、という環境ができた。生産性ばかりでなく、モチベーションも上がった。やがて、他の工場でも競って取り組みが進んだ。

 そして、スタッフ部門の仕事も、このやり方で変えていこう、と「自工程完結」が全社方針になったのが、2007年だった。

 現場の仕事とスタッフ部門の仕事は違う、というイメージを持つ人も、少なくないかもしれない。しかし、それでは結局、「心がけ」を持っているだけなのだ。佐々木氏は、スタッフ部門の仕事にも、「工程」があると気づく。それが、「意思決定」だった。

 資料作りであれ、企画であれ、営業であれ、何かのアウトプットを出して行く途中には、いくつもの「意思決定」が存在しています。「意思決定」が積み重なって、最終的なアウトプットは出てきているはずなのです。

 例えば、会議で使用する資料を作る。スライドにするのか、ペーパーにするのか。どんなソフトウェアを使って作るのか。どんなデザインを選ぶのか。どんな書体にするのか。何枚にするのか。データはどこから持ってくるのか。表にするのか、グラフにするのか。いくつ入れるのか……。すべては、資料を作る人の「意思決定」で選んでいくのだ。

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