運用面で乗り入れが厳しいという理由も怪しい。北海道新幹線の時刻表が発表になった時点で、青函トンネルの当時の貨物列車と新幹線列車のダイヤを重ねたところ、下りのカシオペアと北斗星が使っていた時間帯はぽっかり空いていた。上りのカシオペアは「はやて100号」と重なってしまうけれど、前後に30分程度変更すれば運行可能だ。
北海道新幹線のダイヤ発表時(2015年12月)に、当時の時刻表と北海道新幹線のダイヤを合成してみた。赤線は北海道新幹線、黒線は貨物列車、緑がカシオペア、青が青森〜札幌間の急行「はまなす」。上りのカシオペアは調整が必要だが、カシオペア、はまなすの運行は可能に見えたその後、JR東日本は2017年から運行開始するクルーズトレイン「トランスイート四季島」の北海道乗り入れを発表する。JR東日本は青函トンネルの運用時間帯の隙間があると自ら証明して見せた。
結局、カシオペア廃止の理由は「機関車」であった。JR東日本が青函トンネル対応の電気機関車を購入すれば運行可能。ただし、運行頻度が少ない列車のために、新幹線区間対応の高額な機関車を購入しても利益にならない。それは民間企業としては当然の判断だ。
では、JR貨物が導入する電気機関車を借用するというアイデアは当時からなかったか。いや、それはあったはずだ。日本を代表する鉄道会社のJR東日本が、素人の鉄道ファンでさえ分かる技術的な可能性に気付かないわけがない。それでも、JR貨物の電気機関車を使えなかった理由は、国土交通省の意向だったと言われている。
JR貨物の青函トンネル対応電気機関車の導入については、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が支援している。同機構は北海道新幹線の建設主体である。機関車の購入費用、保安装置、研修基地の新設などで総額190億円以上。その2分の1を機構が助成金として交付。残り2分の1も機構が無利子で貸した。整備新幹線の建設業務の一環という解釈だ。
JR貨物としては、青函トンネルが新幹線化しなければ、自社の長期計画で機関車を更新できた。新幹線計画のおかげで巨額の機関車更新費用が必要となった。ならば新幹線の建設主体が助けましょう、というわけだ。これは理にかなっている。
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