編集部F: 嫌がらせだけで済んで良かったですが、場合によっては殺されてしまうこともあった時代ですからね……。
小日向: 一方で、関ヶ原の戦いの後、昌幸と信繁が処刑されることになったとき、信幸が助命嘆願したおかげで紀伊九度山への流罪で済みました。信幸がいなければ、後の信繁の活躍はないし、この真田丸というドラマもなかったかもしれませんね。九度山に蟄居中、信繁の家が火事で焼けたときもお見舞い金を送るなど、非常に家族思いの優しい人だったようです。
編集部F: そうそう、前に本多忠勝を取り上げた際に、忠勝の長女・小松姫に少し触れました。最後にここでガッツリお話いただければ!(笑)
小日向: はい、分かりました(笑)。真田丸でもしばしば登場するように、信幸は最初の妻として真田信綱の娘である清音院を迎え入れました。ドラマでは「こう」という名で長野里美さんが演じています。
その後、小松姫を正室にするわけですが、そのときの逸話がおもしろいです。父が徳川四天王の忠勝ですから、箱入り娘でわがままに育ちました。あるとき、家康が家臣の武将をずらりと並べて、その中から小松姫に婿選びをさせようとしました。小松姫はひれ伏している武将一人一人のマゲをつかんで引っ張り、顔を上げさせて品定めをしました。武将たちはマゲをつかまれても文句は言えないわけです。
ところが、信幸だけが「無礼者」と小松姫を叱責したのです。まじめな信幸にとって、そうした小松姫の振る舞いが許せなかったのでしょう。すると小松姫はいたく感動して、「結婚するならこの人しかいない」と、信幸に嫁ぐことを決めたのです。
編集部F: 真田丸では「稲」という幼名で吉田羊さんが演じますね。この逸話のシーンがドラマにも出てくるか、楽しみです。
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