列車の車内販売を終わらせてはいけない理由:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
若桜鉄道社長の山田和昭氏は、2015年8月にひたちなか市で開催された「ローカル線サミット」に登壇し、自社の課題は「客単価を上げること」と語った。地域の人口は増えない。観光客を集めて乗ってもらっても、距離が短いから運賃収入は大きく伸びない。そこで乗客の上乗せと同時に、付加価値による収入増が必要と考えていた。
若桜鉄道社長、山田和昭氏
私は会場でそれを聞いて「単純に、かつて国鉄が採用した2等運賃、1等運賃を採用し、運賃を2倍、3倍にすればいい」と思った。運賃が上げられない、という固定観念では話が進まない。まずは特別料金をいただく、そこからどんなサービスを提供するか考える。
隣に女子大生を乗せればセクハラというなら(関連記事)、民話の語り部でもいい。車窓から見える山、建物、すべての質問に答えてくれるガイド付き車両はどうだ。そう考えていかないと、閉塞(へいそく)感を打破できない。
若桜鉄道の「客単価を上げたい」に対する1つの答えが車内販売だ。鉄道直営ではないにしても、売り上げからいくらかの営業権料を得られるかもしれない。商売が上向きなら、鉄道直営でもいいし、新たな品目を抱えて2人目の車内販売を乗せてもいい。車内販売に活路があると考えた若桜鉄道は観光ビジネスとして正しい判断をしている。観光で訪れた人は、食べたいし、飲みたいし、記念品が欲しいのだ。
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