カンボジア代表・猫ひろしの「素顔」と「日本人帰化問題」を追う赤坂8丁目発 スポーツ246(1/4 ページ)

» 2016年08月23日 11時45分 公開
[臼北信行ITmedia]

 リオデジャネイロ五輪が閉幕した。日本が過去最多のメダル41個を獲得し、その熱闘に酔いしれながら連日寝不足に陥っていた人も多いはず。だが最終日の21日に行われた男子マラソンは1人の“元日本人選手”が日本勢3人を話題だけで完全に飲み込んでしまった。カンボジア代表のお笑い芸人・猫ひろし(本名・滝崎邦明)だ。

 猫は155人中139位(リタイアは15選手)で完走。最下位のアブドレ・メスカル(ヨルダン)とのデッドーヒートを展開しながら最後は振り切り、完走した選手の中では下から2番目のタイムだった。2時間45分55秒で“ブービー賞”ながらも、持ち芸の「ニャー」のポーズでゴール。残念ながら日本の中継局だったNHKではこのシーンが映像で流されなかったものの、レース当日のネット上ではYahoo! の「検索データ」で「猫ひろし」のワードが1位に躍り出るなど話題を独占していた。

 ちなみに3人の日本勢はいずれも惨敗だった。佐々木悟が2時間13分57秒で16位。石川末広が2時間17分08秒で36位、北島寿典は2時間25分11秒の94位に沈んだ。確かに猫よりも上位とはいえ、日本勢3人はお笑い芸人を本業にしているマラソン弱小国の代表選手とは違って歴とした実業団選手だ。それだけにメダル獲得もしくは最低でも入賞が期待されていたが、レース中もまったくと言っていいほど見せ場を作れないまま終わってしまった。

 そんな尻すぼみの日本勢3人よりも、紆余曲折ありながら夢の五輪出場を成し遂げた猫の力走のほうがよっぽど興味深いと思った人が大半だったようである。

 猫も成績だけを見れば、間違いなく惨敗。しかし何度も繰り返すが、彼の本業はWAHAHA本舗所属のお笑い芸人だ。それまで門外漢だったはずのマラソンに挑戦し、国籍を変更して五輪代表の座をつかみ本大会出場も果たして完走を果たすまで8年半――このサクセスストーリーには賛否両論あるにせよ、本当に実現させてしまったことにはもう「見事」という他にない。

WAHAHA本舗に所属している猫ひろし(出典:WAHAHA本舗)
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