カンボジア代表・猫ひろしの「素顔」と「日本人帰化問題」を追う赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)

» 2016年08月23日 11時45分 公開
[臼北信行ITmedia]

猫に対する批判の声はいまだ根強く

 一方で今はだいぶ沈静化してきているが、縁もゆかりもないはずのカンボジアへ国籍を変更してまで五輪代表となった猫に対する批判の声もいまだ根強く残っている。先にも挙げたようにカンボジアはマラソンの強豪国ではない。IAAF(国際陸上競技連盟)が五輪出場のレギュレーションとして定めている男子マラソンの参加標準記録は(A)2時間15分、(B)2時間18分の2タイプ。

 1カ国につきAのタイムを突破した選手ならば最大3名、Bならば1名が代表選手として出場可能というのが、そのルール。そして最低ラインのBに届く選手がいないカンボジアのような国については代表1名の枠が与えられる。2011年11月にカンボジア国籍を取得した猫は、この枠を巧みに利用してつかんだというわけだ。

 最も猫へのバッシングがピークに達したのは、間違いなく2012年のロンドン五輪代表選出のときだろう。同年2月の別府大分毎日マラソンで2時間30分26秒のタイムをマークしたことが評価され、前回の北京五輪代表だったヘム・ブンディンを差し置いて猫がカンボジアのロンドン五輪・男子マラソン代表に選出。しかし日本国内から疑問の声が数多く上がり、日本陸上競技連盟やマラソン関係者からは辛らつな批判も向けられた。

 騒動を懸念したIAAFが結局「(ロンドン五輪の時点で)国籍取得から1年未満かつ連続1年以上の居住実績がない」ことなどを主な理由に、猫のロンドン五輪代表選出を認めず、カンボジア側へ通達。最終的にカンボジアのオリンピック委員会も受理したことで猫のロンドン行きの夢は絶たれてしまった。

 この当時の猫は、まさに四面楚歌。ネット上でも「五輪に出る売名行為のためにカンボジアを利用しようとした」「どうせロンドンに出られないと決まったら日本国籍にすぐ戻すに決まっている」「逆に出場できなくなってネットで“炎上”したことで、名前が知られて良かったんじゃないか」などと書き込まれ、袋叩きにあった。

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