「小さな大企業」を作り上げた町工場のスゴい人たち

なぜ学校のプールで「水泳帽子」をかぶるのか 知られざる下町企業のチカラ水曜インタビュー劇場(水泳帽子公演)(2/7 ページ)

» 2016年08月31日 06時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

水泳帽子をつくり始めた

創業当時、おむつカバーの縫製工場

土肥: フットマークは1946年に創業(当時は磯部商店)して、赤ちゃん用のおむつカバーをつくっていたそうですね。布おむつだけではおしっこが漏れてしまうので、尿漏れを防ぐためにおむつカバーをつくっていたわけですが、そのような会社がなぜ水泳帽をつくったのでしょうか?

磯部: 夏の時期はおむつカバーの売り上げが落ちるんですよ。なぜか。夏は暑いので、おむつカバーを着けていると、赤ちゃんのおしりが蒸れてしまう。できるだけ涼しく過ごさせたいので、着用させない親が多かったんですよね。あと、洗濯をしても夏は乾きが早い。雨が数日降らない限り、「おむつカバーが足りない」ケースがなかったんですよね。この2つの理由で、夏は売り上げが落ちていました。

 おむつカバーは、当時「女工(じょこう)」と呼ばれる人たちがつくっていました。でも夏は売り上げが減少するので、何もしない時間ができてしまう。よくないサイクルに陥っていたので「夏に売れる商品を開発しなければいけない」という方針を掲げました。いろいろ考えてみて、当社で海水用の帽子をつくっていることに着目しました。

土肥: 海水用の帽子?

磯部: はい。女の子がかぶるモノだったのですが、それほどたくさん売れていたわけではありません。海に行っても、20〜30人に1人くらいしかかぶっていませんでした。なぜ海水帽子をつくっていたかというと、おむつカバーの素材を生かしていたんですよね。当時のおむつカバーは、おしっこが漏れないようにナイロンでつくっていました。

海水用の帽子。耳も隠れるのが特徴で、当時着用している子どもは少なかった

土肥: ちょ、ちょっと待ってください。おしりに使っていた技術を、頭に流用したわけですか?

磯部: はい。おむつカバーで漏れにくい素材をつくっているのであれば、それを応用して「水泳用の帽子もつくれるのでは」という発想ですね。

 「夏に売れるモノはないか」「海水帽子をつくっている」ということで、学校のプールの授業で帽子を使ってもらうのはどうか? と考えました。近所にある学校の先生に話を聞いたところ、2つの課題を抱えていることが分かってきました。

土肥: その課題とは?

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