「豊洲新市場はカジノにすればコスト削減になる」は本当かスピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2016年10月04日 07時50分 公開
[窪田順生ITmedia]
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議論を進めるために

 もちろん、こういう話をしても、「いや、IRなんて言葉に騙されないぞ、カジノをやったら日本中にギャンブル依存症が溢れかえって、マフィアやらが暗躍して治安が悪化するに決まっている」という人もいるだろう。

 ただ、反対するにも賛成するにしても、まずは日本人に縁遠い「カジノ」というものが、世界ではどのように受け取られ、どのように運営されているのかということを理解してからではないだろうか。少なくとも、「ケチがついた土地ならカジノにすればいいじゃん、ギャンブル施設ならイメージが悪くても平気でしょ」みたいなノリを、「知識人」が語っているような今の認識では、建設的な議論が1ミリも進まない。

 事実、岩屋氏もこれまで多くの「反対派」や「慎重派」のみなさんと意見を交わしてきたが、なかなか議論が噛み合わないことに気づいたという。

 『なぜそこまで議論が噛み合わないのかと不思議に思っていたのですが、あるとき、私がイメージしている「カジノ」と、その方々がイメージしている「カジノ」は、まったく違うものであることに気づきました。否定的な意見をもつ人たちがイメージしているカジノというのは、実は世界的に見て「50年近く前のカジノ」のことだったのです』(「カジノ法」の真意)

 15年にわたって「IR」の必要性を訴えてきた岩屋氏の提言は傾聴に価する。興味のある方はぜひ手にとっていただきたい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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