飲食店での現金取り扱いに潜むリスク(2/3 ページ)

» 2016年10月21日 05時30分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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 一方、日本ではどうか。調査主体によって若干の違いはあるが、2015年時点でクレジットカード+デビッドカードで16〜18%、Suicaやエディ、そしてIDなどその他の電子決済手段(調べていただくとすぐに分かるが、笑えるほど多種類である)を合わせてもようやく20%程度だという。これでも近年その割合は着実に増加中なのだが、OECD加盟国の中ではイタリアと並んで最低レベルにランクされる。

 理由は幾つか挙げられる。安全な日本では消費者の多くは現金を持ち歩くことに大した不安を感じていないし、街角にさまざまな(コインを使う)自販機が普及している。店舗側としては、クレジットカードの手数料が世界的にも高い水準にあり(後述)、経営的に無視できないコスト負担を強いられる。

 しかしながらよく考えてみると少々不思議である。日本人は世界的にみてもまれな「潔癖症」民族である。他人の触ったエスカレーターの手すりやつり革につかまるのさえ嫌がる人が少なくないくらいだ。

 その日本人の大半が、どこの誰とも知らない他人の触った硬貨を行きずりの店とやり取りし、しかも飲食店の従業員がその現金の受け取りをした素手で配膳したり調理したりするのを平然と受け入れているのだ。これは不思議といえば不思議な状況である。

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