小久保: 例えば、フック。以前、フックといえば黒色か白色かウッド調の色しかありませんでした。なぜ色付きのモノしかなかったかというと、当時は透明のノリがなかったんですよね。つまり、色付きのノリを隠すために、フックに色が付いていました。しかし、透明の両面テープが登場したことで、他社から透明のフックが発売されました。
土肥: 透明のフックだと「ひと工夫」がないですよね。
小久保: そうなんです。透明のフックだと、価格競争に巻き込まれるのは目に見えています。では、どうしたか。フックの裏に両面テープが付いているわけですが、それをめくろうとしたところ、めくりにくかったんですよね。「面倒」「難しい」と感じたわけですが、自分がそう感じたということは他の人も同じようなことを考えているかもしれない。めくりやすくするために、両面テープを少し長くしました。
土肥: 少し長くすることで、「面倒だなあ」「難しいなあ」という課題を解決されたわけですね。
小久保: はい。ただ、時代はどんどん変わっていきます。冷蔵庫の扉の部分などに、フックを付けている人がいますよね。裏面に磁石が付いているので、扉の部分にペタっとくっつけることができます。ただ、最近の冷蔵庫って表面がガラスでできているモノが増えてきて、そうした冷蔵庫には磁石がくっつかないんですよね。
裏面が磁石のフックを使っていた人は困っていました。「以前の冷蔵庫にはフックを使って、必要な書類をはさんでいたのに……」と新たな悩みがでてきたわけです。
必要な書類などをはさんでいたのに……といった感じで。そこで、磁石に代わる素材はないかと考えました。それまでの両面テープは一度使ったら粘着力が落ちていましたが、何度も使えるモノはできないかと考えました。両面テープを開発している会社に相談して、粘着力が落ちないモノを開発してもらい、それをフックの裏に貼ったところ、たくさんの人にご購入いただきました。
商品というのは「かゆいところに手が届くモノでなければいけない」という人がいらっしゃいますが、私は「お客さまにかゆいと感じさせてはいけない」と考えています。
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