小久保工業所、なぜヒット商品がどんどん世に出るのか水曜インタビュー劇場(アイデア公演)(1/5 ページ)

» 2016年10月26日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

水曜インタビュー劇場(アイデア公演):

 「新商品を出したいけれど、いいアイデアが浮かばないなあ」といった悩みを抱えている人も多いのでは。そんな人に、ご紹介したい企業がある。和歌山県海南市というところに本社を構える「小久保工業所」だ。

 会社は1996年に設立し、生活雑貨を中心に製造している。従業員は76人(2016年9月)で、売り上げは約60億円(2015年9月期)。特筆するのは、新商品の多さである。年間で100種類を超えることもありながら、次々にヒット商品を生み出しているのだ。

 最大のヒット商品は、洗顔時に石けんやフォームを泡立てる「洗顔用泡立てネット」である。2001年に発売したところ、石けんの泡立ちに不満を抱いていた女性の間で話題に。現在でも月に70〜80万個売れていて、累計1億個以上売れるほどのメガヒット商品に成長した。

 なぜ小久保工業所は年間に100種類ほどの商品を開発することができるのか。開発するだけではない。なぜ次々にヒット商品を生み出すことができるのか。その秘密を探るために、同社の小久保好章社長に話を聞いた。前後編でお送りする。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

 →なぜ従業員80人の会社が、新商品を年100種類も出せるのか(前編)

 →本記事、後編


土肥: 前回、なぜ従業員80人ほどの会社が、年に100種類も新商品を出すことができるのか。そんな話を中心にうかがいましたが、その中で小久保さんは「機能、価格、デザイン――この3つがうまくかみあわないと、なかなか売れない時代になった」とおっしゃいました。ただ、小久保工業所の場合、「この3つだけではない、もう1つある」とも話されました。その「もう1つ」とは、どういう意味でしょうか?

小久保: よく「小久保工業所はアイデア商品をたくさん出されていますね」と言われるのですが、アイデア商品って一部の人しか支持されないことが多いんですよね。少数の人しかご購入いただけないので、アイデア商品はヒットしにくくなる。では、どうしているのか。商品に「ひと工夫」加えることが大切かなあと思っています。

土肥: ひと工夫?

小久保: はい。新商品を企画しているとき、担当者って「あれも、これも、それも」といった感じで、たくさんの機能を加えたくなるんですよね。例えば、3つの機能が浮かんだら、すべて搭載したくなる。でも、してはいけないんです。

 世の中には「こんなことができる」「あんなこともできる」「そんなこともできる」といった商品がたくさんあります。例えば、手袋。「家の庭で使えますよ。工事現場ても使えますよ」といった感じで、あれもこれもアピールしているモノがあります。でも、「家の庭で使えます。園芸専用」「タフな現場で使えます。工事現場専用」と何かに特化したモノのほうが、人間って注目すると思うんですよね。

土肥: でも、アイデアが3つあれば、開発担当者って「3つ詰め込みたい」と思うのではないでしょうか?

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