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» 2016年11月03日 06時00分 UPDATE

高井尚之が探るヒットの裏側:ロードスターが高く評価されるワケ (2/4)

[高井尚之,ITmedia]

設計の軸足を「機能」から「運転する人」に変えた

 まずはマツダの設計思想の変化で見てみよう。「人馬一体」とは、マツダのクルマのキャッチフレーズで、開発現場の思想もこの言葉に基づく。一見、さっそうと走行するクルマのイメージだが、もともと平安時代から続く流鏑馬(やぶさめ)に由来する言葉ゆえ、その本質は違うという。

 「マツダの人馬一体とは何かと聞かれたら、私は『安全・安心』と答えています。暴れ馬を乗りこなすようにビュンビュン走るのではなく、乗っている人にやさしいクルマという意味です。例えば、運転する環境が変わっても、落ち着いて走行できるクルマづくりを目指しています」(同社・車両開発本部長の松本浩幸氏)

 かつてクルマは、自動車好き向けに開発されることも多かった。もちろん現在でも、そうした人は一定層いるが、日常生活における足回りで利用する人が大多数だ。

 松本氏が語った「運転する環境」とは、例えば日中と夜、晴れの日と雨や雪の日でも運転環境は違うことだ。もちろん当日の道路事情によっても変わる。一般道では対向車もあれば歩行者も自転車もいるからだ。同じ道路でも、空いていてスムーズに走れるときもあれば、交通事故や道路工事の影響などで渋滞するときもある。こうした環境の変化でも安定して走行するクルマづくりを目指したという。

 近年のマツダ車の好調要因として、同社が開発したスカイアクティブエンジンが脚光を浴びるが、エンジンの技術開発と同時期に取り組んだのが設計思想の見直しだった。

 「理想的なクルマとは何かを考えて社内で徹底討論したら、どんな状況でもドライバーが適切に対応できるクルマに行きついたのです。クルマが大好きな走り屋さん向けではなく、例えば、男性よりも体力の劣る女性でも、安全で安心して走行できるクルマの開発です。近所のコンビニに行くときでも、高速道路を走るときでもクルマが同じように振る舞ってくれる。そうしたクルマにするために、人間工学の視点も分析し、五感で感じたものをどう判断して、どう操作に生かしていくかを研究し続けています」(松本氏)

 少し引いた視点でみれば当たり前のような話だが、以前は、ともすれば競合他社を意識して性能や燃費といった「機能軸」中心に見ていた。いわばメーカー目線だ。それを「運転する人」に変えたことで、消費者目線に近づいたのだ。

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