組織文化の「10原則」とは?企業はどうあるべきか(11/11 ページ)

» 2016年12月07日 11時45分 公開
[Strategy& ]
プライスウォーターハウスクーパース・ストラテジー株式会社
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9. 公式な組織の取り組みを行動と整合させる

 本稿ではアイデアを急速に広めるために「非公式リーダー」が果たすことのできる役割に重点を置いてきたが、新しい文化の方向性と既存のビジネスの進め方を一致させることも同様に重要である。非公式なメカニズムや文化の介入は、より一般的で「公式な組織」の構成要素を補完し統合するものでなければならず、双方の間に行き違いがあってはならない。組織のデザインや分析論、人的資源、無駄のないプロセスの改善といった規律を通じて、人々が働く仕組みを提示することにより、公式な組織は従業員の活動に対して合理的な動機づけを与える。一方、非公式な組織は、最高のパフォーマンスを特徴づける感情的コミットメントを掲げることを可能にする。

10. 時間をかけて文化状況を積極的にマネジメントする

 非常にうまく文化とともに歩むことができた企業は、自社の文化に対して、積極的にモニタリングやマネジメントを行い、注意を払い、更新に努めている。なぜだろうか? 最初に述べたように、戦略上、経営上の優先事項と合致したときに、文化は隠れた活力源となって、公式なプロセスやプログラムよりも速いスピードで変化を加速させることのできるモチベーションを与えることができるからである。今日は非常に効果的な文化があったとしても、明日はそれで十分だとは限らないのである。

文化マネジメントに取り組んできたサウスウエスト航空(出典:同社サイト) 文化マネジメントに取り組んできたサウスウエスト航空(出典:同社サイト

 サウスウエスト航空は、文化マネジメントに取り組んできた企業の一例である。大手航空会社であっても倒産が日常茶飯事であった業界において、長期的な成功を収めたことで知られるサウスウエスト航空にとっての活力源は、40年間変わらず、すべての従業員に深く浸透した自尊心であった。同社は、顧客やオーナーよりも従業員第一主義を掲げた環境を作り上げることで、感情的コミットメントや自尊心が育まれ、卓越した顧客サービスの提供につながることを見いだしたのである。

 しかし、サウスウエスト航空において、文化への取り組みが終わることは決してない。同社の戦略や戦術、技術が、変化する外的環境に対処できるよう進化を遂げているのと同様に、非公式な行動を含む具体的な人的資源の活用法についても、時代とともに変化しているのである。

文化とともに

 企業の文化状況は、チャレンジングで多次元的であり、また、対応が難しい場合も多いが、強力な感情の力をリソースとして必要とする。人的、技術的、財務的といった他のリソース同様、感情のリソースから最大限に価値を引き出すよう努力することは、リーダーの義務である。

 文化を根本的に変えることもできない。しかし、それらを尊重し、最大限に活用する方法が分かれば、そして、ともに歩み、その隠れた力をうまく利用することができれば、活力源となって、強力なサポートを提供してくれるだろう。

 手始めに、自分自身に一連の問い掛けをしてみるとよい。あなたの周りの人たちが何をすべきかを決定する、最も重要な感情の力とは何だろうか? 戦略上、経営上の必須課題を満たす上で、最も重要になると思われる行動の変化をいくつか挙げるならば、それはどのようなものだろうか? 協力を仰ぐことのできる信頼できる非公式リーダーとは誰だろうか? これらの重要な行動を発信し、強化するために、あなたや仲間のシニアリーダーたちは、それぞれ何ができるだろうか? と。

 あなたの会社が置かれた環境として、尊敬の念と知性を持って文化にアプローチすれば、文化を利用して競争力に弾みをつけることができるだろう。今こそ始めるときである。

“10 Principles of Organizational Culture” by Jon Katzenbach, Carolin Oelschlegel, and James Thomas, strategy+business, Issue 82, Spring 2016

著者/監訳者プロフィール

ジョン・カッツェンバック

Strategy&ニューヨークオフィスのシニア・エグゼクティブ・アドバイザー。Strategy&内のカッツェンバック・センターも共同で率いる。同センターのシニア・フェローであるジア・カン氏との共著『インフォーマル組織力−組織を動かすリーダーの論理−』(税務経理協会、2011年、原著名“Leading Outside theLines”)がある。

カロリン・エルシュレーゲル

Strategy&サンフランシスコオフィスのカッツェンバック・センター・ディレクター。同センターのグローバルオペレーションの指揮をとり、文化やリーダーシップといった題材について、世界中のクライアントにアドバイスを提供している。

ジェームズ・トーマス

Strategy&ドバイオフィスのパートナー。組織文化のソートリーダーを務める。カッツェンバック・センターの中東部門を率い、文化や組織分野のエキスパートとして活躍する。

岡野卓郎(おかの たくろう)

Strategy&東京オフィスのマネージャー。約10年にわたり幅広いクライアントへのコンサルティング経験を有する。最近では、日本企業のグローバル化戦略、組織改革などを中心としたプロジェクトを手掛ける。


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