増沢隆太(ますざわ・りゅうた)
株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役。キャリアとコミュニケーションの専門家として、芸能人や政治家の謝罪会見などをコミュニケーションや危機管理の視点で、テレビ、ラジオ、新聞等において解説している。大学や企業でのキャリア開発やコミュニケーション講座を全国で展開中。著書「謝罪の作法」他多数。
会社員であれば誰でも何度か転職を考えるもの。問題は今、すべきなのか、そうでないのかの判断です。その判断に正解・不正解はあるのでしょうか? ヒントはご自身の「時価」だと思います。そうです、高そうなお寿司屋だと皿の色では値段が分からず、メニューにすらも値段ではなく「時価」と書かれている、例の不気味なやつです。
年の初めや年度末など、キャリアカウンセリングを申し込んで来る人が増えます。「今、転職すべきでしょうか?」と聞かれるのは当然のようによくあることなのですが、当然のように正しい答などありません。
麻雀は下駄(げた)を履くまで分からない。これはキャリアでもいえることです。その転職が正しいかどうかなど、誰にも分からないのです。しかし麻雀同様に、推測はできます。少しでもリスクを減らす努力こそ、キャリア決定においては重要なことでしょう。
ではどうすればリスクは減るでしょうか。自ら考えることを放棄し、「あり・なし」で判断したがるような人は「良い転職・悪い転職」の答えをいきなり求めます。答を求めるのはリスクコントロールではなく単に不安な感情に振り回されているだけ。答がないからこそ自分の頭で考えなければなりません。
転職する以上は何がしかの「やりたいこと」や「ほしいこと」があるはず。そうであれば、自分がやりたいことがなぜその選択(転職そのものや転職先企業)だと実現できるのか、を考えるべきです。
ゆえにまず「やりたいこと」が何であるかを整理する必要があります。例えば○○という業務がしたくて転職――であれば、その実現に必要な役割、役職、職務分掌、といったポジション確保が必要です。それが確保できるかどうかの検証です。
給料を上げたいのであれば、それだけの年収提示が確保されるかどうか、となります。
転職で禁句とされるが、実は一番多い「人間関係が嫌で辞める」場合も同じです。転職すればそれが変わるのかどうかを確認できなければ、今と同じ確率で人間関係不適合が起こる可能性があります。
例として挙げた中で、事前に予見できるものは何でしょう?
ポジションと給与は、内定通知や雇用契約書があれば、一定の法的担保になります。こうしたものを求める転職であれば、担保となる契約書などが得られれば、成功の確率はぐっと高まりますし、無ければ反故(ほご)にされるリスクは自分で背負うことになります。法律違反ではあっても、昨今のような厳しい景気環境では、特に中小企業など、雇用契約書を結ばない、という例は現実にあります。法律違反だ! と言って改善されるなら良いのですが、そうでない場合であれば、そのリスクは織り込んで転職に踏み切るかどうか、自己判断になります。
残念ながら、よほどの人材バリューのある方でない限り、現実問題で採用においては圧倒的に採用側が強い立場であるのは事実です。契約を結ばない企業に転職するにおいては、しっかりその自己責任を自覚してください。
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