あなたが電車内で失った“忘れ物”の運命杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)

» 2017年06月09日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

他社の忘れ物の対応は……

 阪急電鉄以外の鉄道事業者は、忘れ物についてどんな対応をしているだろうか。JRグループ各社の場合はほぼ同じ対応だ。届けられた駅でデータを登録したのち、集約場所にまとめられる。ここで一定期間保管されたのち、集約駅の最寄り警察署に移される。ここでいう“一定期間”は、保管場所によって異なると説明されている。しかし、遺失物法に照らし合わせると、一定期間は最大2週間だろうと思われる。

 遺失物法では、忘れ物を拾った人は速やかに持ち主に返すか、警察署長に提出する義務がある。施設内で忘れ物を拾った人は施設占有者に届けてもよい。ただし、不特定多数が利用し、忘れ物件数が多く、適切な保管場所を用意できる施設は、政令で特例施設占有者として扱われ、忘れ物の保管ができる。

 特例施設占有者も速やかに持ち主に返すか警察署に届ける義務がある。しかし、実物を届けなくても、2週間以内に忘れ物に関する書類を警察署長に提出すれば、そのまま保管を続けられる。見方を変えると、2週間以内に実物を警察署長に届ければ、書類を提出する必要はない。書類作成の手間を省くため、2週間以内に実物を警察署に渡したい、となる。鉄道事業者が保管期間を2週間とせず、保管場所によって異なるとする理由は、毎月○日と○日、あるいは毎週○曜日など、締め切り日を設定しているからだろう。

 大手私鉄各社は対応が異なる。JR同様「一定期間保管したのち警察へ」とする会社が多い。しかし、「1週間以内に警察に届ける」(東急)、「最大3カ月間保管」(京急)という会社もあった。

大手私鉄の忘れ物扱い比較
東武鉄道 集約駅で一定期間保管ののち警察に届ける
西武鉄道 駅で3日間保管し、4日目以降は指定の警察署に届け出
京成電鉄 お忘れ物センターで保管
京王電鉄 原則3日間保管し、4日目以降は警視庁遺失物センターへ送付
東京急行電鉄 木曜と月曜に集約駅に集められ、翌日に警察に届ける
京浜急行電鉄 取り扱い駅で2〜4日間保管したのち京急お忘れものセンターに集約。傘は1カ月、他は3カ月間保管。ただし現金・貴重品・個人情報の含まれる物件等は警察署に届ける
東京地下鉄 3〜4日保管。以降は警視庁遺失物センターに移送
小田急電鉄 集約駅で一定期間保管ののち警察に届ける
相模鉄道 届けられた日から次の水曜日までお忘れ物センターで保管し、それ以降は警察署へ移管
名古屋鉄道 一定期間保管。現金や携帯電話などについては警察署に届け出
近畿日本鉄道 1週間をめどに警察に届けて保管され、3カ月程度で個人情報のないものは近鉄が引き取る。傘などはイベントなどで販売する場合がある
南海電気鉄道 保管している駅で一定期間保管したのち警察に届ける
京阪電気鉄道 お忘れ物センターで約3日間保管したのち警察に届ける
阪神電気鉄道 阪神梅田駅お忘れ物センターで一定期間保管したのち警察に届ける
阪急電鉄 お忘れ物センターで傘は2週間保管、他は3日間保管したのち警察署で3カ月間保管
西日本鉄道 管理駅で一時保管の後、所轄の警察に届け

 遺失物法には処分に関する条文もある。保管中に忘れ物の価値が下がりそうな場合、保管に過大な費用や手数がかかる場合は売却してもいい。また、持ち主が2週間以内に判明しない場合も売却できる。この場合、忘れ物がモノからカネになっただけで、持ち主に返還するために現金を保管する必要はある。いずれにしても、忘れ物は3カ月間で拾い主のものになる。

 ただし、買い手が現れず、売却しても売却のための費用が回収できない場合は処分できる。また「傘、衣類、自転車その他の日常生活の用に供され、かつ、広く販売されている物」は2週間で売却処分可能だ。阪急電鉄が「2週間保管ののち処分」と発表した根拠はここだ。

 処分された場合は持ち主には戻ってこない。鉄道施設や電車内に限らず、忘れ物をした場合、気づいたらすぐに取り戻す行動を起こそう。先延ばしにするほど取り戻せる可能性は低くなる。

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