「只見線」「南阿蘇鉄道」の復旧が遅れた“原因”は何か杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

» 2017年06月23日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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国鉄の遺恨を捨てて予算を増やせ

 なぜ、鉄道には特別会計がないか。いや、特別会計のようなものはあった。日本国有鉄道だ。日本の幹線鉄道交通を所管し、民間では維持できないローカル線を維持し続けた国鉄こそ、鉄道特別会計の役割を代替する存在だった。そう考えると、国鉄の破綻は日本にとって、鉄道交通の地位をおとしめる大事件だった。いまさら悔やんでも仕方ないけれど、鉄道の災害復旧が進まない理由も、遠回しには国鉄の因果である。

 いまさら鉄道特別会計を作るなどできない。しかし、国土交通省に鉄道整備予算が乏しいという現実はある。鉄道整備のために財務省にお伺いを立てれば、国土交通省には空港・道路含みでたくさん予算を配分したから、そこで融通してくれ、となる。それでは国土交通省内部で調整できるかというと、道路は旧建設省の所管であり旧運輸省の鉄道に融通するつもりはなく、旧運輸省同士の空港も行革で民営化に向かっており、鉄道まで面倒を見ていられない。

 踏切の解消1つとっても道路寄り、自動車交通優先で行われる。鉄道はふびんだ。政府は鉄道の位置付けを上げていく必要がある。日本は新幹線の海外進出のために闘っているけれど、この状態ではなんとも心もとない。国鉄の負の遺産は忘れて、もっと鉄道の整備と維持、技術開発に予算を分配すべきではないか。

photo 国の一般会計のうち、公共事業関係費の内訳。約6兆円のうち、鉄道は1000億円に満たない(鉄道建設関係者OBによる路線強化検討WG技術講演会資料)
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