大井町駅と蒲田駅、便利なのはどっち?区役所最寄り駅対決(2/3 ページ)

» 2017年06月26日 08時00分 公開
[鈴木弘毅ITmedia]

大井町と蒲田、勝敗は新線の開通にかかっている!?

駅格差 首都圏鉄道駅の知られざる通信簿』(著・首都圏鉄道路線研究会、SBクリエイティブ)

 次に、乗降客数で比較してみよう。JR・東急線は、どちらも蒲田駅のほうがだいぶ多い。しかし、これにりんかい線を加えると、その差はぐっと縮まる。りんかい線は年々利用者が増加しているので、将来的には逆転する可能性も秘めている。

 逆転するか、それとも蒲田が二の足を使って引き離すか。そのカギになるのは、両駅を通る新線の開通が実現するかどうかにかかっているだろう。目下どちらの駅も、羽田空港へのアクセスを視野に入れた新線建設構想の渦中にあるのだ。

 大崎駅からりんかい線に入って大井町駅を経て、遊休状態にある東海道貨物線に乗り入れて羽田空港へ乗り入れる「羽田空港アクセス線西山手ルート(仮称)」は、2000年に運輸省の答申で初めて構想が取り上げられた。2002年にJR東日本が東京モノレールを子会社化したことでいったん棚上げになったが、東京オリンピック・パラリンピックの招致が決まった2013年ごろから議論が再燃している。

 単純に羽田空港へアクセスするというだけでなく、JR東日本がりんかい線の株式を買収することによる単一運賃体系での運行、りんかい線とJR京葉線の直通運転化なども構想に含まれており、近い将来には大井町駅の利便性が飛躍的に高まる可能性がある。さすがに3年後に迫っている東京五輪に間に合わせるのは難しいだろうが、2024年には全線開業が可能と報じられている(オリンピックに合わせて暫定開業させる構想もあったが、その後取り下げられている)。

 池袋周辺に住む私にとって、羽田空港は近いようで遠い存在である。浜松町駅でモノレールに乗り継ぐと、距離的に遠回りであり、時間もかかる。品川駅で京急線に乗り換えるルートも同様だ。りんかい線を経由して天王洲アイル駅でモノレールに乗り換えれば距離的には近くなるが、運賃が高くなり、天王洲アイル駅では一度駅の外に出ての徒歩接続になるため、やはり時間がかかる。

 距離的には圧倒的に遠い成田空港のほうが行きやすいと感じるほどなのだ。JR埼京線から直通で羽田空港へアクセスできるようになれば、池袋、新宿、渋谷といった副都心エリアの莫大な需要を獲得できるだろう。

 2015年3月に東京都が公表した「広域交通ネットワーク計画について(中間まとめ)」では、当該路線はもっとも優先順位の高い「整備について優先的に検討すべき路線」の1つに選ばれ、同年7月の「広域交通ネットワーク計画について(まとめ)」においても「特に効果が期待できる」とされている。現実味が、いよいよ色濃くなってきているのだ。 

 ただ、「整備について優先的に検討すべき路線」に選ばれた5路線の中に、30年近くにわたって議論されているもののいっこうに進んでいない都営大江戸線の光が丘以西延伸計画も含まれているのが少し気になるところではある。

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