またか。なぜアントニオ猪木にトラブルが多いのか赤坂8丁目発 スポーツ246(4/4 ページ)

» 2017年06月30日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]
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猪木氏は究極の“夢追い人”

 「究極の“夢追い人”だから周りからうまい話を持ちかけられると乗っかってしまうところがある。『アントン・ハイセル』の失敗の件があったのに、その後も『アントン・フーズ』の名前で健康食品事業を始めたり、外部からのエネルギーを一切使用せずに運動を続けるというシロモノの発電機『永久電機』の発明に尽力し続けたり。

 ただこれらもすべて頓挫してしまった。すべてがそうだとは言わないが、スーパースターの猪木さんだから『うまく利用してやろう』と近づいて来る悪い人間も少なからずいる。そういう輩にうまく丸め込まれて担がれ、それまで良好な関係だったはずの人と亀裂が生じるケースもある。まあ、それも猪木さんらしいといえばそれまでなんですが……」

 個人的に言えば、猪木氏は安住の地を見つけて楽をしようとせず、絶え間ない変化を追い求めて常に足掻(あが)くことを生きがいにしている人なのではないだろうか。同じ場所にとどまり続けていても進歩はない。だからこそ新しい何かに挑戦することを望み、時に奇想天外な発想を世に訴える。プロレスの枠組みだけにとらわれず、多くの失敗も重ねながら世間を驚かせ続けてきたのは、きっといい意味で「永遠の少年」のように好奇心旺盛だからなのだろうと考える。

 だが、周辺ではそういういわゆる「猪木イズム」を巧みに利用しようとするズル賢い輩が現れては消えることを繰り返し、そしてそんな彼の破天荒な生き方について行けずに離れていく人も多い。猪木氏に数多くのトラブルが付き物となっている背景には、夢を追う姿勢を持つがゆえにそこに群がろうとする一部の悪い取り巻きの存在や、彼自身もまた「去る者は追わず」という非常にドライなポリシーをもっているからだと考察する。

 猪木氏が座右の銘としている詩で「道」というものがある。「この道を行けばどうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし 踏み出せばその一足が道となり その一足が道となる 迷わず行けよ 行けばわかるさ」――。

 これからも猪木氏には「道」を突き進んでほしいと願う。ただし、かつてのアントン・ハイセル問題や今回の件を含めたリング外のゴタゴタでファンを幻滅させてしまうような姿だけは、もう見たくない。

臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:

 国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。

 野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。


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