“熱中症対策の塩入りドリンク”の代名詞的存在としても定着を果たしたソルティライチは、入れ替わりの激しい飲料業界において、発売7年目でも夏の果実飲料のトップを守っている。大ヒットし、メジャーブランドになっていった11〜14年のころは、上層部から「もっと売ること」を求められたこともあったという。
「あの時はつらかったです(笑)。ですが、『たくさん売ることが第1義ではないよね』と、最近はビジョンを上層部と共有できています。大事なのは、お客さまに必要とされること。今の世の中にはない“一段上のおいしさ”を目指して、ものづくりの姿勢において業界を引っ張っていくくらいになりたい。それはブランド当初からずっと変わらないですね」
この「ものづくりの姿勢」が表れているのが、リニューアルへの姿勢だ。ソルティライチを始めとし、世界のKitchenからシリーズは定期的に味のリニューアルやパッケージ変更などを行っている。その際、「もっとおいしくなる」「もっとコンセプトが伝わる」ことだけを重視するようにしているのだという。
「飲料業界は春秋の年2回、店頭の棚内で商品の入れ替えがあります。棚に置き続けてもらうために、その時期に合わせてリニューアルをすることは通例になっている。ですが世界のKitchenからでは、『リニューアルのためのリニューアルはしない』とよく議論しています」
それどころか、17年5月のリニューアルでは、味を変えず、パッケージをライチを前面に押し出したものに変更するのみだった。
「チームとしては、もっとおいしいソルティライチを作れると考え、味変更をする予定でした。ただ、何回もお客さま調査をした結果、これまでの味を支持する方が多かった。ある意味すごく光栄なことです。ソルティライチはもうわれわれだけのものではない。リニューアルを会社の都合でしてはいけないし、味を変えなくても必要とされ続けるのが大事。上層部も同じ感覚を持っていて、営業も納得してくれました」
“ソルティライチは自分たちだけのものではない”という考え方は、消費者とのコミュニケーションにも表れている。ソルティライチは16年に5倍濃縮タイプを発売し、「アレンジできる」「好きな濃さにできる」と好評だ。
開発のきっかけの1つになったのが、「ソルティライチソーダを出してほしい」といった、アレンジ商品を求める声だ。「ソルティライチシリーズを広げることはあまり考えていなかった」というが、さまざまなニーズに応えられる濃縮タイプを展開することになった。
「濃縮タイプは私も使ってみたかったということもあるのですが(笑)、ソルティライチを大好きなお客さんに“出来上がりだけじゃないもの”を届け、アレンジを楽しんでもらいたいという思いから作りました。自家製や素材と向き合うというキーコンセプトにも合っていましたね」
“アレンジレシピ”は公式WebサイトやTwitterアカウントで発信。ファンも自作レシピをTwitterなどのSNSに投稿し、大きな話題を呼んだ。図子さんのチームも「濃縮タイプで氷を作り、かき氷にして食べる」――といったレシピを楽しんでいるという。
濃縮タイプの展開には、「家庭に入っていきたい」と思いもある。
世界のKitchenからシリーズのファンは、10年間で変化してきている。08〜10年は、食に対して「よいもの」や「エンターテインメント性」を求める20〜40代女性中心。だが、ソルティライチが登場した11年に、一気に男性が増えたのだという。
「部活や営業周りなどのシーンで選んでもらえるようになったのか、10〜20代男性が増えました。今は30〜40代男性にも広まっています。個人的な感覚ですが、『いいものにはお金を出したい』という層は男性にも増えてきているのではないでしょうか。現在は外での飲用が多いですが、家庭の冷蔵庫の中にソルティライチが入るようにしていきたいですね」
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