グリー、低迷期から復活なるか 新規タイトル好調通期としては減収減益

» 2017年08月04日 17時25分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 グリー復活なるか――。スマートフォン向けゲームを開発するグリーが8月3日、2017年6月期(16年7月〜17年6月)の決算を発表。通期としては減収減益となったが、第4四半期にリリースした新規タイトル4本がいずれもランキング20位以内に入る好調な滑り出しを見せ、長い低迷期からの脱出が見える手応えを感じさせた。

新規リリースゲームが好調なスタートを切ったグリー

 グリーの2017年6月期(16年7月〜17年6月)の連結業績は、売上高653億円(前期比6.5%減)、営業利益79億円(43.8%減)、純利益121億円(44.2%増)。業績が悪化していた海外子会社の米Fantasy Legend Studiosの売却など、海外戦略の転換に伴い60億円の特損を計上するが、投資有価証券売却益や法人税などの減少により、純利益は増加している。

 「釣り☆スタ」などのWebブラウザゲームで急速に業績を伸ばしたグリー。しかしスマートフォンへの対応が遅れ、減収減益が続き、15年には赤字に転落するなど業績が急速に悪化していた。再び成長するために、14年にWebゲーム(ブラウザ上で動作するアプリ)からネイティブゲーム(スマートフォンにインストールして動作するアプリ)へと転換する方針を発表、スマホ向けアプリゲームの開発体制を強化してきた。

 ヒット作がなかなか出ない状態が続いていたが、17年4〜6月にネイティブゲームの4タイトル「アナザーエデン 時空を超える猫」「SINoALICE(シノアリス)」「戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED」「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか〜メモリア・フレーゼ〜」を新規リリース。いずれも各プラットフォームのランキングで20位以内に入り、中でも「シノアリス」の初動は想定を大きく上回る「未曽有の数。見たことがない規模のユーザーに遊んでいただけている」(グリー前田悠太取締役執行役員)という。

4タイトルが20位以内に。「シノアリス」は当初トラブルも相次いだが、Twitterの公式アカウントのフォロワー数が30万を超えるなど注目度が高い

 グリーのコイン(ゲーム内通貨)消費構成比は、これまでネイティブゲームよりもWebゲームの方が上回っていた。だが、「シノアリス」「アナザーエデン」などのタイトルがけん引し、第4四半期に初めてネイティブゲームが50%を超えた。グリーの田中良和社長は「一時的なものではなく、ここ2〜3年のシフトの成果が出た。開発力があるので、継続的にこのレベルのゲームが作れる体制ができたと考えている」と期待を寄せる。

ネイティブゲームが成長

 今期は、成功したゲームの技術の蓄積を新規タイトル開発に活用し、「良いゲームを早く面白く作る」ことを目指す。「アナザーエデン」の技術を活用した「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」のような例を今後も増やしていくという。

 海外でのゲーム開発は撤退し、「日本のスタジオで作って全世界で売る」方針へと切り替える。現在は、日本で展開している既存タイトルの海外展開を検討しているという。

 また、ヒット確度と収益性向上のため、自社オリジナルIP(知的財産)、パートナーと提携して開発する共同原作IP、他社の有力IPと、バランスを取った開発を行う。通期のリリース予定は、オリジナルIPと共同原作IPは1本、他社有力IPは5本。有力IPの基準について田中社長は「他社のゲームだが、『Fate/Grand Order』の『Fate』シリーズは有力IPなのかというと、必ずしもそうではない。ケースバイケースだが、単純に有名なIPを使えば『Fate』並みに新しいゲームを作れるわけではなく、濃いファンがいることが大事」と語った。

自社IPと他社IPのバランスを取って開発する

 18年6月期第1四半期の業績予想は、売上高205億円、営業利益15億円、純利益10億円を見込む。前年同期よりも営業利益を低く予想するが、「ネイティブゲームのヒットを一過性のもので終わらせないために、広告宣伝費を積極的に投下する。長期的な目線で企業価値を向上するために投資する」(田中社長)という。

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