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» 2017年10月26日 07時33分 公開

北朝鮮の「生物兵器」は、どれほどの脅威なのか世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

[山田敏弘,ITmedia]

「13種類の生物兵器」をすぐに武器化

 出鼻をくじくようで申し訳ないが、そもそも北朝鮮の生物兵器開発について詳細を知るのは至難の技だ。特に北朝鮮が孤立した国であることに加え、生物兵器に使われる病原菌の培養や、その武器化工程などはすべて隔離されたところで行われているはずだからだ。だが脱北者や軍による分析情報などで、生物兵器についての情報は漏れ伝わっている。

 北朝鮮は、生物化学兵器の拡散を防止する生物兵器禁止条約に締約しており、これまで生物兵器開発の疑惑を全否定してきた。もちろん、そんな言い分を素直に受け取ることはできない。実際に、米シンクタンク「核脅威イニシアティブ(NTI)」は、韓国・国防省の情報として、北朝鮮は「13種類の生物兵器」をすぐにでも武器化できると指摘している。さらに、「炭疽菌か天然痘ウイルス」が使われる可能性が高いという。

 炭疽菌や天然痘以外の病原体は、例えば、ボツリヌス菌やコレラ菌、朝鮮出血熱ウイルス、ペスト、腸チフス、黄熱病ウイルス、赤痢菌、ブルセラ属菌、ブドウ球菌、発疹チフス菌、カビ菌だ。

 例えば、炭疽菌は01年に米国で犯罪に使われている。フロリダ州に拠点を置くタブロイド紙の編集者宛に送られた封筒に少量の炭疽菌が入れられていて、この編集者は炭疽菌によって死亡した。当時筆者は現地で取材を行ったが、タブロイドの会社周辺から、郵便を配達した配送センターまで大規模に立ち入り禁止措置が行われていたのを記憶している。これが兵器として使われるとなると、その脅威は計り知れない。

 米科学者連盟(FAS)も、北朝鮮は「一定量の毒素やウィルス、細菌兵器の菌」を生産できる能力を持ち、化学兵器(サリンや金正男氏の暗殺に使われたVXガスなど)についても開発プログラムは「成熟」しており、かなり大量の備蓄があると分析する。米国防総省も、「北朝鮮は生物兵器の使用を選択肢として考えている可能性がある」と指摘している。米シンクタンクのランド研究所も、北朝鮮分析で知られるジョンズ・ホプキンス大学の高等国際問題研究大学院(SAIS)も、北朝鮮が生物兵器の開発を進めているとしている。

 そしてベルファーセンターの報告書も、北朝鮮が病原菌を所有していることは間違いないと記している。ただ一方で、「ソ連は1928年から1991年の63年間という時間と、4万人が関わって開発が続けられたが、彼らが武器化できたのは13種類だけだった」ことを考えると、韓国・国防省が指摘するような「13種」すべてを「武器化はできていないだろう」とも分析している。

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