ところが15年7月、JR北海道は合意案を含めて4案を検討中とマスコミに発表する。原案の在来線改造と、地下案の復活、現駅と接する東側の市有地、現駅の西側300メートル手前だ。新たに3案を出す意図は原案の白紙撤回に違いない。JR北海道は、新案の理由を「在来線プラットホームを減らしたくないから」と説明した。しかし、当コラムで私が過去に示したように、札幌駅より線路数が少なくても、運行本数が多い駅はある。線路配置と信号設備の改良で対応できるはずだ。(関連記事「札幌駅に北海道新幹線のホームを作れない」は本当か?」)
これは鉄道・運輸機構も同様に考えていたようだ。JR北海道、北海道、札幌市、鉄道・運輸機構の4者会議で、鉄道・運輸機構は、近隣に折り返し設備を作ることで、JR北海道が主張する「在来線93本への支障」を「在来線14本への支障に低減」する案を示した。また、この時点で、西側案は現札幌駅から離れすぎているため、検討対象から外れた。これに対して私は「JR北海道にとって西側案はB案、つまり、A案として東側案を良く見せるための踏み台」と思った。また、在来線直下の地下案は費用の問題で難しいと取り下げられた。これもJR北海道としては織り込み済みかもしれない。
その後、JR北海道はことあるごとに東側案をプッシュし続ける。鉄道・運輸機構は在来線プラットホームを改良可能という立場だ。意見が平行線のまま膠着(こうちゃく)した。17年3月に「JR北海道が東側案を撤回」と報じられたけれども、JR北海道はすぐさま否定。1カ月後に東側案の図面と行程表を示し記者会見を実施。図面も行程も鉄道・運輸機構が作るのがスジだ。しかし、JR北海道は自腹で図面を作ってきた。
なぜそこまで東側案にこだわるのか。いや、なぜ、鉄道・運輸機構側が「できる」という在来線案をJR北海道は固持するのか。
「JR北海道にはね、在来線プラットホームを減らすための人材がいないんです」
情報元の鉄道建設OBは、旧知の関係者と接触し情報を集めたという。その結果を聞いて、私はお笑い番組の出演者のように、ふかふかの応接室ソファでひっくり返り、あきれはてた。詳しくきけば、線路の配線を設計する人も、信号設備を最適化する人も、大手私鉄やJR東日本のように、限られたリソースを最大限活用して列車を運行できる人もいない。これは現場の人々が悪いのではない。現場にそういう研さんをさせてこなかったJR北海道の企業体質に問題がある。
JR北海道の企業体質といえば、労使関係が取り沙汰される。わずか3年で社長、会長が自殺した件でも労使関係が取り沙汰された。デキることをデキないという、これはたいてい労組の主張だ。札幌駅問題でも、労組が抵抗しているのではないか、という見方もある。しかし、これはJR北海道最大の労組、「JR北海道労働組合」の委員長が否定した。地元経済雑誌「財界さっぽろ」の17年10月号でコメントしている。「組合が現駅案に反対していると思われて不本意だ。全くのうわさにすぎない。そもそも新幹線札幌駅問題について、詳しい情報も得ておらず、意見を聞かれたこともない」
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