北海道新幹線「札幌駅」地下案はダメ、ゼッタイ!杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

» 2017年10月27日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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誰が決めなくてはいけないか

 地下駅案については、国土交通相が理解を示したという報道があった。さらに北5条通りの構想に国交相が容認という報道も追い打ちを掛けている。これを受けたせいか、北海道、札幌市も理解を示したと報じられ、最も有力な案となりつつある。最近の報道では、在来線改良案にするためには、18年4月に11番プラットホームの新設工事に着手する必要があるという。しかし、上記で述べたように、もっと急ぐべきは地下案であって、18年4月の結論では間に合わないかもしれない。

 さて、この問題について、誰がイニシアチブを取るべきだろうか。JR北海道は、建設後の営業当事者である。JR北海道が新幹線を引き受けると納得しなければ建設できない。鉄道・運輸機構は、JR北海道を説得する立場であり、説得に失敗すれば妥協するほかない。

 札幌市は地下案に理解を示したというけれども、もともと現駅案を支持し都市計画も進めている。決定に従わざるを得ない立場だ。その上司たる北海道、北海道知事はといえば、北海道全体を考えて、JR北海道に対して路線維持をお願いする立場である。札幌駅問題に強い立場を取れないだろう。

 このままではJR北海道の言いなりになって、JR北海道も北海道も札幌市にも利点の少ない地下駅が作られそうだ。本当に北海道や札幌市のためになる現駅案を捨てて、妥協の産物の地下駅ができる。新幹線札幌地下駅ができたら、それは最善の選択ができなかった当時者たちの墓標だ。彼らはどんな顔でテープカットをするつもりだろうか。

 最善の選択ができない者に活を入れる上司は誰か。JR北海道の上は国交相で、国交相が明確なビジョンを持たず、自分で決められないとしたら、その上司は官邸、安倍晋三総理となる。北海道知事にもの申せる人は誰か。これも官邸、安倍総理となるだろう。

 問題がこじれたら、決着するための大岡裁きは安倍総理にお願いするしかないか。いや待て、総理の決裁案件としては、余りにも情けない。何しろ、そもそもの原因は「JR北海道に在来線札幌駅の運営能力がない」ことである。こんな情けない案件を上に上げる前に、自分たちが何をすべきか気づいて、よい方向へ動き出してほしい。

 私は「地下駅でもいいや。雪の影響が少なくなれば遅延も減る。北海道新幹線が遅れたら大宮〜東京間の混雑により、上越新幹線や北陸新幹線まで影響してしまうだろう」程度にしか思っていなかった。しかし、OBの話を聞いて考えを改めた。

 もっとも、言い訳をさせていただくとすれば、北海道以外に住んでいる人にとって、札幌駅なんて地下だろうと、どっちでもいい話でもある。東京から新幹線で遊びに行くなら、札幌でなくてもいい。函館、富山、金沢、新潟、秋田、山形、大阪、広島、岡山、のぞみの高速化で近くなった博多もある。札幌なんて、たくさんある目的地の1つにすぎない。

 北海道の人々、札幌の人々は、逆の立場で考えてほしい。上で挙げた都市の全てが、観光でもビジネスでも、定住者誘致政策でもライバルになる。これらの都市と魅力を競うとき、札幌駅新幹線プラットホームは地下で良いだろうか。無関心を決め込まず、よく考えてほしい。

photo 合意 協議終結とは?

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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