土肥:2008年にいまの形の軍港めぐりがスタートしたわけですが、不安はなかったですか?
鈴木:周囲からは反対の声がたくさんありました。「潜水艦なんて見てもつまらないよ」「マニアの人しか見に来ないよ」と。1年目、乗客数の目標を「5万人」に設定したところ、また反対の声がたくさんありました。「そんなに乗るわけがないだろう」と。ただ、実際に運営したところ、1年目の乗客数は7万8000人だったんですよね。でも、また反対の声がありました。「目標を達成したのはたまたま。リピーターは来ないよ」「物珍しさもあって1年目は多かったけれど、2年目は減るはず」と。社内外からそのような声があったのですが、2年目は9万人でした。
土肥:なぜ、乗客数は増えたのでしょうか?
鈴木:船による軍港めぐりは、呉(広島県)、佐世保(長崎県)、舞鶴(京都府)などで行われていますが、米海軍と海上自衛隊の艦船を同時に見ることができるのは横須賀だけ。あとは、案内人の解説は人気でして。
土肥:観光地の遊覧船に乗ると、録音テープを流すだけといったケースが多いですよね。機械的に説明されるので、どうしても面白みに欠ける。一方の軍港めぐりは違う。案内人の話術で、乗客を魅了させている。「夢中になって海に落ちないようにしてください」ときちんと注意を喚起しながら、「万が一落ちてしまっても右手のアメリカ海軍基地には行かないでくださいね。上陸の際にはパスポートが必要になりますので、泳ぐときには左手にお願いします」と。
私が乗船したときには、目玉ともいえる空母「ロナルド・レーガン」を見ることができませんでした。乗客はガッカリするところなのですが、案内人は空母の形をしたお土産を見せて、このように言いました。「本日は残念ながらロナルド・レーガンを見ることができませんでしたが、細部にまでこだわったミニサイズの空母はいかがでしょうか。中に10個のチョコクランチが入っていますので、1日1個ペースで食べると10日間空母を楽しむことができます」と。
多くの乗客が笑っていたので、「空母を見れなくて残念」といった気持は忘れてしまったのではないでしょうか。それだけではありません。自然に……というか、ちゃっかり自社の商品を宣伝しています。
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