――なぜ180度変わってしまったのでしょうか?
新田氏:前職と現職で課されるタスクが同じ量だったからです。残業が禁じられたことにより、彼らが前職で10時間以上かけて取り組んでいた仕事を7時間程度で終わらせる必要が生じました。そうすると、業務の進め方や優先順位の付け方などを根本的に見直さなくてはなりません。タスクをこなすスピードも上げねばならず、かなり頭を使います。
彼らは業務時間が短くなったにもかかわらず、毎日へとへとに疲れて帰宅。「残業させてほしい」と悲鳴を上げているそうです。
――「残業がない会社=優しい会社」というわけではないのですね。
新田氏:むしろ、残業できない会社が厳しく、残業を許している会社が社員に甘いケースもあります。長時間労働が起きている会社はブラック企業で、従業員は被害者だと思われがちですが、実は生活費を稼ぎたいから残業をする人や、効率的に仕事を終えようというマインドがなく、だらだらと作業している人が少なからず存在しているのです。
――ただ、今の日本社会には遅くまで残業している人を「頑張っている」と評価する風土も根強く残っているのではないでしょうか。
確かにそういう一面もあります。“モーレツな働き方”をする社員に支えられ、日本企業が業績を伸ばした高度成長期に若手時代を過ごした上司は、残業する部下を評価しがちです。
こうした上司は働き方改革の第一歩として、ITツールなどで部下が抱えているタスクと所要時間を可視化することをお勧めしたい。一概にそうとは言い切れませんが、早く帰っている部下が多くの仕事をスピーディーにこなし、遅くまで残っている部下がわずかな仕事に時間をかけていたというケースが見つかり、部下の見方が変わってくるはずです。
――ツールの導入によって、これまで見えてこなかったスキルの差が可視化されるわけですね。
新田氏:はい。今後は遅くまで働いた人が「頑張ったね」と評価される時代は終わり、労働時間の長短にかかわらず、成果を上げている人こそが評価される時代になるでしょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング