――大手企業が残業を減らした結果、しわ寄せが下請けの中小企業に来ているとの話もよく耳にします。
新田氏:それは間違いありません。働き方改革は良い面ばかりがクローズアップされがちですが、その陰で苦しんでいる人たちは少なからず存在します。
日本企業は「お客さまは神様である」という文化が根強いため、下請け企業と元請け企業の間に大きな力の差が生じています。そのため、一見すると労働時間の短縮に成功した大手企業が、実は下請けに仕事を丸投げしていた――というケースがあるのも事実です。
例えば、大手企業の社員が「自分たちはもう帰るから、明日の朝までにこのプログラムを作るように」と下請け企業に仕事を振って早めに帰宅し、下請け側は徹夜で仕上げる――ということも。下請け側は、依頼を断ると膨大な利益がなくなってしまうので、やらざるを得ない。こうした状況は、働き方改革の「闇」の部分といえます。
――状況の改善に向け、自民党の「時間市場創出推進(ナイトタイムエコノミー)議員連盟」が、月曜日の出社を遅らせる「ラグジュアリーマンデー」を提案するなど、新たな動きも出てきています。週明けの出社が憂鬱(ゆううつ)になる「サザエさん症候群」を防げると一部で話題になりましたが、どう捉えていますか。
新田氏:まだ決定したわけではないので、効果のほどは未知数です。繁忙期の月末を避けられるため、ビジネスパーソンは「プレ金」よりも休みやすいでしょう。あって損はない制度だと考えています。
――週休3日制に関してはいかがでしょうか。
新田氏:導入済みの会社は少しずつ増えていますが、「時間限定社員のみ」「育児・介護従事者のみ」などと制限付きのケースが多いです。そもそも、現在は当たり前になっている「週休2日制」すら定着に時間がかかったため、週休3日の定着も長引きそうです。
最初に週休2日制を始めたのは、1965年の松下電器産業(当時)。その後、金融機関・官公庁・学校といった組織にも定着し、社会全体に「土日は休み」の雰囲気が醸成されるには、20年以上の長い時間がかかりました。時代が違うため、このケースが完全に当てはまるとは限りませんが、週休3日に関しても同程度の時間がかかるとみています。
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