乗り合いタクシーとローカル鉄道は共存できるか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)

» 2018年01月26日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

デマンド型乗り合いタクシーの仕組み

 まず、乗り合いタクシーという用語で走るタクシーには2種類ある。1つは観光バス型。観光地を巡るコースがあって、運賃は固定。1人当たりの値段が決まっている。人数が多ければ割安になる場合もある。タクシーはセダンタイプの5人乗りで、運転手を除けば乗客は最高4人。たいていは2人連れ以上のグループだろうから、基本的に相乗りになる事例は少ないと思う。ワゴンタイプを使う場合は、案内書などで「相乗り」と明記されている。感覚的には、観光バスの乗用車版だ。

 前述のように、道端に乗り場を示す旗が立つ。これは路線バスに例えられる。ただし、路線バスのように、毎日、必ず走るという仕組みではない。時刻表はある。乗り合いタクシーを利用する人は、時刻表を確認して、乗りたい停留所、降りたい停留所、どの便に乗るか決めて、前日までにタクシー会社に予約を入れる。予約した人が1人でもいれば、タクシーが乗り場にやってくる。同じ便を予約した人がいて座席に空きがあれば、もちろん相乗りになる。つまり、予約型路線バスだ。これを「デマンド型乗り合いタクシー」という。

 運行は地元のタクシー会社が担当する。複数のタクシー会社があって、乗り合いタクシー事業に参加する意志がある場合は、区間ごとに担当会社が決まる。私は乗り合いタクシーを利用したわけではないけれど、その道路は第三セクター鉄道路線に沿っていて、主要駅ごとにタクシー会社があった。もっとも、担当区間は停留所の受付分担を決めるだけで、乗客は目的の停留所まで乗車したまま。担当区間が変わるからといって、タクシーを乗り換えるわけではない。

 運賃は区間ごとに決められており、計算の根拠はタクシー料金ではなく、その地域で運行されている第三セクター鉄道の運賃に合わせているという。タクシーの賃走料金にすれば高額になってしまうし、第三セクター鉄道より安くすれば、鉄道の利用客を奪ってしまうという判断だろう。

 ただし、金券方式の回数券はある。100円券が11枚つづりで1000円、というような方式だ。中学生以下、障がい者手帳所持者は半額。また、高齢で免許証を手放した人にも割引制度があるという。

 デマンド型乗り合いタクシーが設定されていない時刻に乗りたい場合、自宅まで迎えに来て欲しい場合は、通常のタクシー配車サービスを使う。これはもう純然たる賃走タクシーだ。バスや鉄道に比べればかなり高額になる。しかし、その賃走運賃はタクシー会社の損益分岐点を考慮して決められているはずで、鉄道に合わせた乗り合いタクシーでは運賃が安すぎる。そこはうまくしたもので、自治体から補助金が出ている。

photo 全国ハイヤー・タクシー連合会の「乗合タクシー事例集」より。路線バスのように運行時刻とルートが決められている。事例は135もあり、全国レベルで普及が進んでいる(出典:全国ハイヤー・タクシー連合会 乗合タクシー事例集
photo 三陸鉄道の駅を拠点とする乗り合いタクシー。鉄道と乗り合いタクシーの共存関係がみられる事例(出典:全国ハイヤー・タクシー連合会 乗合タクシー事例集

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