乗り合いタクシーとローカル鉄道は共存できるか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

» 2018年01月26日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

悔しいが、鉄道より使いやすい

 自分が田舎に住み、クルマの運転に自信がなくなったとしたら、と考えたら、デマンド型乗り合いタクシーはとても都合のいいシステムだと思った。タクシーに乗っている間、青い旗を探してみると、だいたい家が建っている場所にある。集落ごと、という大きな単位ではなく、3軒から4軒程度の家があれば旗がある。どの家からも徒歩3分以内で乗り場に行けるだろう。第三セクター鉄道の駅まで行く必要はない。

 予約制の名残だろうか、予定の時刻に乗客がいない場合もしばらく待つというし、電話で確認もするのだろう。地元のタクシー会社だし田舎だから、運転手と乗客は顔なじみでもある。バス会社は定時運行が必須だろうから、乗り合いタクシーは良い意味で緩い。

 バスに比べると乗り心地も良い。何しろセダンタイプの乗用車だ。バスのようなステップはないし、第三セクターの駅のように、プラットホームまで階段を上る必要もない。重い荷物は運転手さんがトランクに積んでくれる。それでいて運賃は電車並みだなんて。年寄りにとって、こんなにありがたい乗りものは他にない。

 補助金を出す自治体としても、バス会社の定期運行にかかる費用の補助に比べればはるかに安価だ。もしかしたら、第三セクター鉄道の維持より、乗り合いタクシーの車両更新を補助した方が合理的かもしれない。行政単位で考えれば、バス会社が地元企業とは限らない。タクシー会社は地元であるし、市民である。小規模ながら地元の雇用を創出しているし、地元企業の支援にもなる。

 鉄道会社は除雪費用を渋って運休するかもしれないけれど、国は国道、自治体も管轄の幹線道路の除雪はきちんとやる。どこを探しても、都合の悪いところが見つからない。強いて言えば、運転手さんと乗客の相性、という問題はあるかもしれないけれど、田舎では商店だって顔なじみだし、乗り合いタクシーに限った問題ではない。

 あえて言えば、設定区間が短い。せめて隣の自治体のJR拠点駅までだ。路線バスの感覚だから、設定区間より遠くへは行けない。終点の先へ行く場合は、JRの駅から列車に乗るかバスに乗るか、別の乗り合いタクシーを予約する必要がある。

photo 地域をくまなく走る乗り合いタクシーの特性を生かし、ドライバーが街の防犯に貢献している(出典:全国ハイヤー・タクシー連合会 乗合タクシー事例集

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