乗り合いタクシーとローカル鉄道は共存できるか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

» 2018年01月26日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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 そのコンセプトは、すでに発表した会社がある。乗り合いバスを運行するWILLER(ウィラー)だ。2017年6月12日、ウィラーは事業コンセプトの発表会「NEXT WILLER 2017」を開催した。そこで「シェアライドサービス」を提案している。これがデマンド型乗り合いタクシーの観光利用に最も近いビジネスモデルだ。

 利用者目線で紹介すると、まず、あなたが旅の予定を立てる。JRの拠点駅から、その付近の観光名所をいくつか選び、シェアライドサービスに登録する。そのツアーを見た別の人から全区間、または一部区間の相乗りをリクエストする。「同じコースを考えていたから一緒に乗って、タクシー代を割り勘にしたい」とか、「A博物館からBレストランへ行きたかったけれど、バスがないから、その区間だけ同行したい」というような。

 あなたが参加者を承認すれば、現地でタクシーに乗り合わせるだけだ。逆に、誰かが立てたツアーを見て、一部区間、または全部を同行するという使い方もできる。運賃はシェアライド公式サイトが判定し、参加者は別個に支払う。旅費はセーブできるし、同じ趣味を持った仲間と出会えるかもしれない。ちょっとワクワクするサービスだ。

 ウィラーは同日、ベトナムでサービスを開始する「ジェニック旅」も発表している。「ジェニックビークル」として運行する7人乗りの小型バス「WILLERビークル」はIT設備が満載だ。Wi-Fiを搭載。大型モニターとAppleTV、冷蔵庫など、まるでリビングのように快適な車内空間。旅の情報を集めやすく、日本語コンシェルジュサービス付きで、運転手とのコミュニケーションも円滑になる。ホーチミン市内ならどこでも送迎無料で、ドライバー付き4時間8800円から。

photo 「WILLERビークル」の客室。ゆったりした7人乗り
photo コンシェルジュサービスで日本語も使える

 ジェニックビークルはウィラーとベトナム最大手のタクシー会社、Mai Linh社の提携による運行だ。18年1月10日、両社は新会社「MaiLinh-WILLER LLC」を設立し、さらなる連携強化を図る。また、台湾でも最大手の高速バス会社、国光汽車客運と提携。「WILLERビークル」の旅を提供予定だ。ジェニックビークルの台湾版である。

 ジェニックビークルはグループ単位で申し込むチャーターバスの方式だけど、将来はシェアタイプも考えていくという。17年の発表会では、日本でも法律問題を解決でき次第、シェアライドサービスを開始したいという意向だった。法的にはデマンド型乗り合いタクシーの方式で解決できそうな気がする。日本でもこんなバス(タクシー)で日本の観光地を巡れたら楽しいと思う。

 乗り合いタクシーの良さは運賃節約と便利さだけではない。楽しい乗りものとして認知されると思う。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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