欧米メディアも報道できない、伊調馨「パワハラ問題」の真実世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2018年03月22日 07時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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欧米では分かりにくい「パワハラ」

 少し話がそれたが、とにかくここまで話が拡大すると、欧米メディアも記事として、どこまで書いていいのか混乱してしまうのではないかと感じる。

 またそもそも、「パワハラ疑惑」という騒動の「パワハラ」という言葉自体が、実は欧米人には問題をつかみにくくさせている気がしている。というのも、そもそも英語には、パワハラという言葉はない。パワハラは日本で生まれた和製英語の造語だからだ。パワーというのは逮捕権など権限を持っているような警察などが使うものというイメージが強く、至学館の学長が言ったように、栄氏にはいわゆる「パワー」はないだろう。英語であえて言うならば、単純に「ハラスメント」または「ブリー(いじめ)」という言い方になるだろう。

 欧米メディアは、「いじめがあるようだ」では記事にすることはできないだろう。そう考えると、やはり現在の騒動が、内閣府の調査などでもう一歩進展がないうちは報じられないと考えられる。

 また至学館側は、今回の一連の騒動にからんで、裁判に訴える可能性を示唆している。いっそのこと、裁判で内閣府への告発に踏み切った伊調氏側の事情も明らかにすべきだろう。

 ただ裁判になれば、海外メディアもこぞって報じる可能性が高い。そうなれば、日本のレスリング界のスキャンダルが世界に知られることになる。それは日本全体の世界的なイメージにもマイナスになることを忘れてはいけない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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