日本ハム本拠地移転、JR北海道はチャンスを生かせるか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)

» 2018年03月30日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

JR北海道社長会見の報道を俯瞰する

 それにしても、北広島市はよく頑張った。鉄道の話ではないので詳しく触れないけれど、ざっと球団移転関連のニュースを追ってみて、久々にスカッとする話題だった。

 一方で新駅誘致絡みの報道を拾ってみた。こちらはモヤモヤする。

 読売新聞 3月28日版「日ハム移転「新駅設置」議論にクギ…JR北社長」

  • 観客の輸送手段の確保に向け「全面的に協力していく」と述べた。
  • 球団や市が求めている新駅の設置については「新駅をつくれば問題が解決するわけではない」と明言を避けた。
  • 「協力したいとは思うが、列車に乗れる人数には限りがある。私どもだけでなく、バスやマイカーによる輸送をどうするかも並行して考える必要がある」

 北海道新聞 3月28日版「ボールパーク候補地決定 JR社長「新駅、必要なら議論」」

  • 「基幹的な交通事業者として全面的に協力したい」と表明
  • 「新駅を造れば交通アクセスの問題が解決するということではない」
  • 「必要であれば新駅の議論という順番になる」
  • 「これ(2020年度までに快速エアポートの3割増発)とは別に協力する」
  • 「年間試合数50〜60に、どれだけのコストをかけられるか」

 朝日新聞 3月28日版「新球場、広さが決め手」

  • 「全面的にご協力を申し上げたい。関係の皆様と協議していく」
  • 「新駅をつくれば交通アクセスが解決するというわけではない」
  • 「千歳線は新球場だけではなく、新千歳空港の輸送も担う。新駅の議論の前に、輸送力増強をどう実現していくか、見据えないといけない」

 「全面的に協力していく」と語っているので、読売新聞の「クギを刺す」という見出しはどうかと思う。いかにもJR北海道が水を差している印象だ。しかし、後段で「協力したいとは思うが……」とトーンダウンしていることも事実。「全面的に」の中に「新駅」は入らないという印象を受ける。シャトルバスのために北広島駅前を整備するとか、野球開催日の増発、車両の増結くらいはしますよ、程度の認識かもしれない。

 うがった見方をすれば「全面的に」とは言ってみたものの、「前向きすぎる姿勢を見せると、新駅設置費用の負担を求められるかもしれない」と警戒しているようにも感じ取れる。これについては、もとより北広島駅は「請願駅として設置協力を依頼」と報じられているから、そもそも北広島市、あるいは球団も含めて建設費、維持費を面倒見ることになりそうだ。JR北海道社長発言は「請願駅の立場を変えない」という念押しだろう。

プロ野球球団本拠地球場と鉄道アクセスの一覧。観客動員数を考えれば、鉄道駅との徒歩連絡は不可欠 プロ野球球団本拠地球場と鉄道アクセスの一覧。観客動員数を考えれば、鉄道駅との徒歩連絡は不可欠

 ちなみに、JR北海道の社長会見は18年の事業計画の発表として行われた。ボールパーク建設決定を受けて行われたわけではない。事業計画では179億円に及ぶ過去最大の純損失を見込んでおり、とにかくおカネがないという状況だ。そんな場で積極的に「新駅を設置します」とは言いづらいかもしれない。有望な案件には投資したい、と言えないのだろうか。

 2本の線路の両側に対向式プラットホームを置く新幹線札幌駅の「大東(おおひがし)案」では75億円の負担を表明し、在来線の増発ができないからと現駅案を否定。ならば、増発する列車の集客になるボールパーク新駅の誕生はありがたいはずだ。相変わらず場当たり的で、鉄道利用者にサービスを提供してお代をいただくという視点に欠ける。

 一方、新幹線札幌駅問題では鉄道本来の事業に消極的だが副業に熱心で、これはもう鉄道事業者としてバランスがおかしい。経営陣は表計算ソフトばかりにらんでないで、出札窓口やプラットホームに立ってお客さまを見てほしい。

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