集客施設の新駅設置で真っ先に思い出した事例が、JR東海の三河塩津駅だ。愛知県蒲郡市にある蒲郡競艇場の最寄り駅。競艇場の向こう、海寄りには埋め立て地と工場団地がある。東海道本線の線路ぎわで、名古屋鉄道が蒲郡競艇場を置いている。JR東海は1988年にここに新駅として三河塩津駅を設置した。1日平均乗車人員は1500人以下で規模は小さく、2017年は無人駅になるなど尻すぼみ感はある。それでも競艇開催時は臨時職員が派遣されるという。1日平均乗車人員も、競艇開催時と非開催時で大きな差があると思われる(詳しくは関連記事:なぜそこに駅はできるのか?)
三河塩津駅の設置によって名鉄蒲郡線は窮地に立たされ、存廃問題も起きている。えげつないと思うけれど、JR東海の戦略が効いている。集客施設付近に、国のご意向とは関係なしに駅を設置できる。これは国鉄が民営化され、身動きが取りやすくなった証しとも言える。JR東海はチャンスを生かしたわけだ。JR北海道にとっても、北広島ボールパーク新駅はチャンスのはずだ。
蒲郡競艇場と北広島ボールパークを比較してみよう。蒲郡競艇の開催日は年間190〜200日。北広島スタジアムの野球開催日は年間50〜60日。これが駅をフル稼働する日となるだろうから、ボールパーク新駅のフル稼働日は三河塩津駅の4分の1程度となる。ただし、ボールパークは常設のショッピングモールやホテルもある。野球の試合がない日も集客を見込めるし、ホテルとショッピングモールの設置によって、スタジアムも野球以外の需要を生むだろう。
試合の観客数は、蒲郡競艇場の収容人数が1万人、札幌ドーム開催時の観客動員は約3万人。この比率だけで言えば、ボールパーク新駅の利用者は三河塩津駅の3倍だ。1日平均乗車人員としては4000人程度。もちろん稼働日は相当な混雑が予想される。駐車場を比較すると、蒲郡競艇場は乗用車3620台。北広島ボールパークは5000台を予定する。北広島ボールパークは「クルマで行けるスタジアム」をうたっているけれども、来場者数に対して駐車場の比率がまだ少ない。公共交通機関にとって、これほど活躍のチャンスがある地方集客施設は珍しい。
こういう状況の中で、JR北海道は「作ってほしいというなら建設費を出してね」というスタンスだけでいることが嘆かわしい。「当社も魅力を感じている。ぜひ新駅を作らせてほしい。ただし、当社の事情も鑑み、ある程度の地元負担はお願いしたい」と素直な姿勢で臨んだほうがいい。協力的な態度を示した上で、ショッピングモールへの関連会社出店の確約を取るほうが賢いと思う。
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