「学校教員の労働環境は劣悪で、ブラック企業をしのぐ」――。いつからか、こんな説がささやかれるようになっている。
ただでさえ、思春期の生徒を相手に学業を教えるのは根気が必要だが、授業後の部活指導、“モンスターペアレント”への対応、授業準備なども適宜発生するため、教員の負担は増すばかりだ。
適切な労務管理ができないブラックな学校は私立・公立を問わず存在するが、どちらかといえば公立校の方が悪質だろう。なぜなら、公立校の教員は“とある法律”の規定によって「残業が存在しない」ことになっており、何時間残業しても残業代が発生しないからだ。
このブラック労働の根源といえる法律は、名称を「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」という。一般的には、略称の「給特法」で知られる。
給特法は、「公立校の教員は授業以外の仕事も多岐にわたり、業務内容が複雑なため、勤務時間を厳密に管理することが難しい」――という前提のもとで制定されている。施行されたのは1972年だが、40年超が経過し、状況が変わったいまも内容はそのままだ。
そんな給特法は、公立校教員に月給の4%分をあらかじめ「教職調整額」として支給する代わりに、残業時間がどれだけ長かったとしても「時間外勤務手当・休日勤務手当を支給しない」という規定になっている。
そのため、夜遅くまで仕事をしている公立校の先生たちは「残業ではなく、好きで学校に残っている」と判断され、残業代が支払われないのだ。
この規定のせいで教員の労務管理を怠り、長時間勤務の実態把握や対策が進まない公立校は数多い。
文部科学省が2016年度に公立校教員を対象に実施した「教員勤務実態調査」によると、「過労死ライン」と呼ばれる月80時間以上の残業をしている教員は、小学校で全体の3割、中学校で6割存在することが明らかになっている。
公立教員の労働環境を是正し、過労死ラインの労働を減らすためには、給特法の改正が必須といえよう。しかし、実際に全教員に対して残業代を支払うとなると、1兆円規模ともいわれる莫大な予算が必要となるだろう。どこから捻出するのか、今後の論点となりそうだ。
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